AIが様々な条件に基づき石油製品の最適な出荷量を予測し、在庫を見える化
課題
石油製品はサプライチェーンにおいて、海上および陸上での輸送を行っています。そのため、気象状況に影響を受けやすく、さらに安全性も強く求められるものであるため、石油製品の供給には様々な制約があります。
また、天候やマーケットの状況が少し変化するだけでも、今後必要となる石油製品の量は増減するため、出荷量をコンピュータで予測するのは困難です。
そこで、天候やマーケット状況が変化しても、その状況に応じて石油製品の出荷量を予測できるシステムの開発が求められてきました。
解決方法
出光興産株式会社と日本電気株式会社は、日本国内の油槽所でAIを活用した石油製品の在庫管理業務をスタートさせました。この在庫管理業務では、AIによる出荷予測システムを使用しています。
マーケットや気象状況を考慮して最適な出荷数量を予測し、各油槽所の在庫状況を見える化できる本システムは、在庫管理を適正化し業務効率を向上します。本システムにはNECのAI技術である「NEC the WISE」のうち「異種混合学習技術」が使われています。
「異種混合学習技術」は、様々な種類のデータの中から高精度の規則性を見つけ出し、その規則に基づいた予測を行います。従来では難しかった、天候などで条件が変化するデータの分析も行えます。
例えば、石油製品は天候によっても需要が変化します。ある気温・降水量の時に最適な出荷量を予測することで、過剰在庫を防げます。
どうなったか
本システムでは、油槽所から各地域のサービスステーションへ石油製品を出荷する際、過去の出荷実績や現在の気温・降水量、原油価格などの情報に基づいて油槽所における出荷予測を導き出します。
以前からAI等のデジタル技術を活用していた出光興産株式会社は、2018年にNECのAIを油槽所に導入しました。青森、八戸、塩釜、福井の油槽所から各サービスステーションへの出荷量を予測して見える化することで、出荷実績と2週間予測の誤差を5%程度に収められました。
また、出荷量を自動予測できるため、熟練者が自分の経験や勘に頼り、時間をかけて出荷量を見積もる手間も省けられます。
まとめ
AIによる出荷予測システムを活用すると、従来のコンピュータでは予測が困難であった、気象条件・マーケット状況を考慮した出荷量予測が行えるようになります。様々なデータに基づいた分析によって、最適な出荷量を導き出せるので、石油製品の過剰在庫を引き起こすリスクも減少します。
今後もAIによる出荷予測システムは多くのデータを活用し、出光興産の石油製品の出荷量予測と見える化によって、サプライチェーンのさらなる効率化が期待されます。
なお、NECの「異種混合学習技術」は、「NEC AI売買審査支援サービス」および「開発者が解釈可能なマテリアルズ・インフォマティクス」にも利用されています。
参考資料
- 出光興産はNECのAIを活用した出荷予測を通じて、石油製品のサプライチェーンを高度化しました[NEC]
- NECのコア技術 : 異種混合学習技術[NEC]
- SBI証券、異種混合技術を用いた「NEC AI売買審査支援サービス」の利用開始を発表 [Marvin.news]
- NECと東北大学が機械学習を用いた「開発者が解釈可能なマテリアルズ ・インフォマティクス」の手法を開発し熱電変換素子の性能を向上 [Marvin.news]
(Marvin編集部)