AIが踏切内の事故を未然に防ぐ:踏切異常状態検知に関する実証実験

課題

高齢者の踏切での事故や、開かずの踏切における無理な横断は後を絶ちません。

1時間のうち40分以上遮断機が降りている状態の踏切を「開かずの踏切」といいます。開かずの踏切では無理な横断をする人が多く、命にかかわる事故も少なくありません。また、高齢者が踏切内に閉じ込められるケースでは、電車の運転手が異常に気づいてからでは手遅れです。

従来では、人が遮断機の降りた踏切内に閉じ込められた場合、周囲に居合わせた通行人が非常ボタンを押し、閉じ込められた人を退去させることで事故を防いだケースが大半でした。

しかし、周囲に誰もいなかった場合、事故を防ぐのは難しくなってしまいます。そこで、周囲に助ける人がいなくても踏切への侵入を検知し、安全を守るシステムが求められています。

解決方法

小田急電鉄株式会社は2020年2月14日(金)より、踏切内の安全性の向上を目的とする実証実験を開始しました。本実験では、ノキアソリューションズ&ネットワーク合同会社が開発した「カメラ映像とAIによる異常状態検知システム(スペースタイムシーンアナリティクス)」を使用しています。この「スペースタイムシーンアナリティクス」を活用した踏切異常状態検知システムにより、踏切内の異常を検知できます。

具体的には、線路の周囲に設置したカメラが踏切内を撮影し、カメラの映像を「スペースタイムシーンアナリティクス」に送信し、解析します。もしも踏切内の異常を検知した場合は、アラームで外部へ異常を伝達する仕組みです。

本実験では、踏切内で発生する様々な動作を収集し、AIで分析します。例えば、踏切内に人が立ち入った場合と、単にカラスやスズメが侵入した場合では取るべき対応が異なります。AIは、人が立ち入った場合のみアラームが作動するよう学習します。

どうなったか

本実験は、3月まで小田急小田原線の玉川学園前8号踏切で実施されました。玉川学園前8号踏切は「開かずの踏切」として有名で、踏切が閉まっているにも関わらず無理な横断をする人が後を絶ちません。

「スペースタイムシーンアナリティクス」を活用すれば、万が一、人や自動車が踏切内に閉じ込められてしまった場合でも、それを検知し異常を管理者へ伝達できます。

そして、駅に近い利用者の多い踏切であるため、本システムの使用により、今後の事故防止に期待できます。さらに今後は、「スペースタイムシーンアナリティクス」のAIによる解析結果を活用して、付近を走行する電車へ異常を伝達し自動停止させる仕組みを構築する予定です。

まとめ

踏切事故を異常検出により自動判定するシステムの実証実験について紹介しました。事故はあってはならない事ですが、必ず起こってしまいます。事故防止の努力の結果、事故の頻度が減るため事故を教師あり学習するための教師データが集まりづらくなるジレンマがあるようです。異常状態は正常からの逸脱により定義されるため、事故のデータを収集しなくても事故かもしれない通常でない状態を検出することができます。実証実験を通じて、異常とみなされるけれども事故でない状況など、様々なデータを収集できたと考えられます。今後の展開に期待です。

参考資料

鉄道安全運行に海外の先進的な技術導入を目指して AI(人工知能)を用いた踏切異常状態検知に関する実証実験を開始 [小田原電鉄]