エクサウィザーズ・大植択真氏インタビュー「徹底的な顧客起点・課題起点な発想でAIの社会実装を実現する」

エクサウィザーズは「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」をミッションとして掲げるスタートアップだ。超高齢社会に代表されるような社会課題を解決するために、AIソリューション事業やAI搭載型サービス事業を提供している。

”エクサは10の18乗、ウィザーズは魔法使い・達人を意味します。この「達人」にはスーパーエンジニアだけではなく、介護現場のベテランなども含まれており、”魔法使い”のような精鋭メンバーが集まっているという意味が込められています。”(エクサウィザーズ関連サイトより)

以前、Marvinでもマンションの成約価格推定システム「リハウスAI査定」に関する事例を紹介したが、世界トップクラスの人材が集まり、最先端ビジネスを展開しているエクサウィザーズ。今回は、AI事業の役員である大植択真氏にお話を伺った。

京都大学工学部卒業。京都大学工学研究科修了。2013年4月、株式会社ボストンコンサルティンググループに入社。事業成長戦略、企業変革、新規事業立上げなどの多数のプロジェクトに従事。2018年1月、株式会社エクサウィザーズに入社。2019年4月より現職。

社会課題解決のためのさまざまなAIプロダクトを展開

大植氏:会社のミッションである『AIを用いた社会課題解決』を目指し、超高齢社会である日本で社会保障費が増える問題をどうするか、労働人口が減りどんどん人手不足になっていく問題をどうするか、そういった課題に対してAIを利活用して取り組む事業を展開しています

超高齢社会における課題は、未だかつてどの先進国も経験しておらず、先行的で論理的な解決策が求められる。そのなかでエクサウィザーズは、介護や医療などヘルスケア領域でのAIプロダクト開発、企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション:テクノロジーによって企業の事業や業務構造を大きく変化させること)を推進して現場の生産性を飛躍的に高めるAIプロダクト開発、人間と協働するAIロボットの開発など、社会課題解決に向けてさまざまなプロダクトの開発に力を入れて取り組んでいる。

大植氏:介護の領域では介護現場でのコミュニケーションやノウハウを動画で共有できるアプリ『ケアコチ』、HR Techの領域ではデジタルイノベーター人材の発掘と育成をサポートするアセスメント『HR君DIA』や、社員を最大限生かせる配置を実現するための人材配置最適化AI『HR君haichi ロボットの領域ではプログラミング知識がなくても各種ロボットに動作を学習させられるAI『COREVERY』など、領域に合わせてAIを利活用したプロダクトを展開しています。

エクサウィザーズが提供しているプロダクトの一部

プロダクト開発にあたり、介護施設や企業の現場で起きている課題をまずは認識し、その課題を解決するにはどういうアプローチができるか、顧客を重視した課題ドリブンなサービス開発を行っているという。

大植氏:現場に課題やペインがあればそこにマーケットがあるという思想に基づき、需要起点で考えていきながら、それを我々の強みである最先端AIテクノロジーで解決できるのかという視点で事業開発をしています。ただ、それだけではなく社内では技術を起点にしたプロダクト開発も行っています。エクサウィザーズの自然言語処理系のエンジニアが執筆した論文が昨年のACL(Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics: 国際計算言語学会)に採択され、その技術をもとに開発したFAQ検索エンジン『Qontextual』もリリースしました。研究開発に近い論文のイノベーションは、どちらかというとニーズよりシーズを育てていく方向でおこなっています

AIエンジニア、ドメイン専門家、戦略コンサルが協働する多様な組織体制

エクサウィザーズでは大学などの研究者との連携も積極的だ。早稲田大学で深層学習をロボットに応用する尾形教授をはじめとしたアドバイザー陣との連携や、組織体制はどうなっているのだろうか?

大植氏:もともと尾形先生の研究論文を基にして、エクサウィザーズのエンジニアがAI実装を担当させていただいていました。今では尾形先生をはじめ、さまざまな領域の先生方にアドバイザーとして参画いただき、専門知見を取り入れながら開発をしています。当社では社会的に非常に意義がある課題を解決することを常に考えており、社会への適用・利活用に拘る文化があります

英オックスフォード大学教授のマイケル・A・オズボーン氏、大泉学園複合施設ねりま健育会病院院長の酒向正春氏など、さまざまな分野のアドバイザー陣から得られる知見が事業に反映されている。

また、AIの社会実装を進めていくために、大学や研究機関との連携だけでなく、AI技術を実装するエンジニア、現場の課題に精通したドメイン専門家、課題解決に長けた戦略コンサルタントなど、多様な人材が社員として集まっていることも特徴だという。

大植氏:戦略コンサルティング会社出身の社員が現場と対話を重ねて、本質的な課題を見極め、AI/テクノロジーで解決可能な課題に対して、開発を進める体制を取っています。また、ドメイン知識においては看護師・介護士や製薬会社出身でディープラーニングもできる二刀流研究者が社内にいることも特徴で、現場の声を適切にプロダクトに反映させています。世界中から優秀なエンジニアも集まっており、エンジニアの4分の1は海外人材です

バックグラウンドとしては、国内外の大手IT企業出身エンジニア、ベンチャーでサービス・プロダクトを作っていたエンジニア、大学研究室に在籍していたエンジニアなど、世界中から優秀なエンジニアが集まっている。

AIノウハウを他社にも提供し、各社のDXを推進

コミュニティ会員向けのイベントも開催中。2019年12月にはオズボーン教授もイベントで登壇。

エクサウィザーズではプロダクト開発だけでなく、企業にAIノウハウを提供する会員型サービス「エクサコミュニティ」も運営している。

大植氏:AIによる社会課題解決は1社だけで成し遂げられるものではなく、日本全体で課題解決に取り組むことが必要と考えています。そのためには、自社で得られた知見をオープン志向で提供していき、各企業のDX推進にも貢献できればと思います。

エクサウィザーズが重視するのはマーケットの水準、つまりニーズベースありきの社会課題解決だ。AIを適用しようとしたらそれ以前にIT化されていない部分が見つかったという話はよく耳にするが、企業へのAI導入においては、最適な手法を取ることが必要だという。

大植氏:日本の大企業の課題解決にディープラーニングを使って解決するものもありますが、課題やニーズによっては従来的な統計手法や最適化で解けるものも結構あります。やみくもに最先端の手法に拘るのでなく、課題に応じて適切なソリューションが打たれている(Problem-Solution Fitがしっかり回っている)状態が理想と考えています

「できる」から「使われる」に

導入したAIシステムやサービスが企業であまり使われずに終わるというのもよくある話だ。企業内で知識がないため持て余したり、課題の共有がうまくできていないままプロジェクトが進んでしまい、結局使えないものができあがる懸念もある。

大植氏:個社課題の解決に留まってしまうと単発プロジェクトで終わってしまうので、それをN化する(≓汎用化)するためのサービス/プロダクトは何か?というテーマについて、各プロジェクトの中で議論を重ねています。更に、先ほど申し上げたコミュニティ型サービスで成功事例をシェアリングすることで、構造的に横展開を起こしていけるような事業運営を意識しています。

また、エクサウィザーズは”現場で使われる”ことに主眼を置いている会社なので、プロダクト開発の進め方にも多くの工夫をしています。顧客の課題解決にしっかりミートすることは当たり前で、更にUI/UXに最大限考慮したプロダクト設計・開発を行い、タイムリーに市場に出してテスト・ユーザーフィードバックをもらう等、顧客視点と開発スピードを大事にしています。プロダクト開発専門のデザイン(UI/UX)については社内で専門チームも抱えています

エクサウィザーズホームページ:https://exawizards.com/

(インタビュー聞き手:森裕紀、記事:蒲生由紀子)