AIが児童福祉司をフォローして、児童虐待対応の意思決定を支援

課題

児童虐待の数は2017年度の133,778件から2018年度には159,850件(速報値)と、平成になってから毎年増えています。1999年度からは13倍超え、1990年度と比較すると140倍を超えています。一方、その対応に当たっている児童相談所の職員、特に児童福祉司の人数は極端に不足しています。児童虐待を防ぐ、または対応できる件数を増やしていくには、システム面でのサポートも必要になります。

解決方法

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)の人工知能研究センターは、児童相談所で利用可能な虐待に対応するためのタブレット端末用アプリ「AiCAN(Assistance of intelligence for Child Abuse and Neglect)」を構築しました。これまでの児童虐待対応データをAIで学習させることで、児童虐待に関する相談が持ち込まれた際に、どの様にリスクマネジメントを行い、どの様な意志決定を行うべきなのかを児童福祉司に提示することで支援を行います。

特に産総研は2013年度から虐待リスクマネジメント事業を展開している三重県と提携することで、県下の児童相談所で2013~2018年の6年間に収集された約6000件の児童虐待対応データから児童の年齢や性別などの基本情報と虐待リスクのアセスメントをデジタルデータ化して、AIの学習データとして利用しました。

ここから虐待の重篤度、将来的な再発率、一時保護の必要性、対応終結までに要する日数などの指標を算定し、それらを予測として瞬時に提示できるシステムとしたのです。このシステムは、児童相談所で利用するタブレット端末用アプリ「AiCAN」と、それをバックグラウンドで支えるクラウドデータベース、確率モデリングなどのデータ分析用 AIで構成されています。

図2

出典:https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2019/pr20190528/pr20190528.html

どうなったか

これまでは他の児童福祉司が対応している家庭についての情報は職員間で共有されていませんでした。そのため、職員が休みの際には、情報の共有は電話などで行われ、リアルタイムでの対応が難しいなどの問題点がありました。

しかしこのシステムが導入されたことで、アプリをインストールしている端末同士で情報共有ができると同時に、経験の浅い児童福祉司であってもベテランと同様の慎重かつ的確な意思決定を行えるようになりました。システムはあくまでも人間をサポートする役目であり、「最終的な意思決定は人間が行う」という原則は貫かれています。

三重県では2カ所の児童相談所でこのシステムを用いて児童虐待に対応するという実証実験を始めました。ここで更なるデータの蓄積を行うとともに、最終決定の仕方に改善がみられるのか、そして児童虐待事案に対する支援の質の向上があるのかを検証します。

まとめ

AIは人材不足の業種をフォローする大きな力となることを期待されています。中でも経験年数の浅い人材の多い児童福祉司をフォローし、児童虐待を未然に防ぐ支援を行うシステムが開発されることは、増え続ける児童虐待案件に対する切り札となるかもしれません。

参考資料