機械学習を活用した土石流検知システム:土石流の誤検知を大きく低減

課題

日本は山地が多く、住宅の裏側や高速道路のすぐ横などに急な斜面がある地域も少なくありません。そのため、特に台風や大雨の際には非常に多くの土砂災害が発生し、大きな被害も発生しています。これまで日本の多くの地域では、土石流の検知を目的にワイヤーセンサーを設置してきました。

しかし、従来のワイヤーセンサーでは1か所に動物がぶつかった際や木々が倒れた場合でも誤作動してしまうケースも多く、本当の土石流発生時のみ警報が作動する検知手段が求められてきました。

解決方法

国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と国土交通省国土技術政策総合研究所は、本当の土石流のみを検知する人工知能センサーシステムを開発しました。本システムを利用すると、比較的安価な複数の振動センサーが検知した振動を機械学習モデルが解析し、土石流による振動であるか判別できます。

この機械学習を活用した土石流検知システムは、異常度計算部と土石流計算部の2つのプログラムから構成されています。1つ目は異常度計算部で、複数のセンサーから送信された振動波形の異常度を計算し、異常候補のデータを2つ目の構成システムである土石流検知部へ送信します。土石流検知部では異常候補データに含まれる振動が本当に土石流によるものなのかを機械学習モデルの一つであるサポートベクトルマシンにより分析し検知します。

ここで、機械学習を活用して精度高く本当の土石流のみ検知するためには、高品質なデータを多数学習しなければなりません。本システムは土石流が多く発生する桜島にて、約1か月間データ収集を行いました。桜島での数多くの振動データから学習データを取得しモデルの学習を行いました。

本システムの大きな特徴は、土石流検知を「点」ではなく「面」で行うことです。従来から振動を検知して土石流の発生を予測するシステムは使われてきましたが、単体のセンサーが振動を検知するシステムが主なため、地震や雨風による振動も土石流として誤検知していました。

従来の土石流検知システムは導入費や維持費の高さが課題でしたが、本システムでは比較的安価なMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動センサー、無線通信装置、太陽光パネル、リチウムイオン電池から構成される無線センサーを使用しています。

装置は太陽光パネルを使用して充電したリチウムイオン電池を動力源として駆動し、フル充電しておけば天候が悪く太陽光パネルでの発電が十分ではない場合でも約2週間は稼働できます。

どうなったか

本システムでは、安価な振動センサーを利用するので複数個所にセンサーを設置し、複数個所における振動を「面」として検知できます。そのため、従来のような誤作動が激減し、本当に土石流の危険があるときに周囲の住民や通行者へアラートを発せられるようになりました。

土石流検知部に関する検証として、桜島で得られたデータを3群に分けて、2群を学習用と1群をテスト用とした検証を3回行う交差検証を行いました。一つ5分のデータ区間として8835データ区間のデータで3群分割交差検証を行ったところ、異常度検出部において619データ区間を異常候補と検出し、さらに土石流検出部dえ詳細な解析が行われました。その結果、データの中の6%となる土石流期間を全て正確に当てることができ、誤警報が一度もない精度となりました。従来手法では20回のうち1回は誤警報だったことから、今回の手法の有効性が確かめられました。

まとめ

最近、2019年の台風19号による被害や2018年の西日本豪雨災害における土石流などで人的・物的な被害が多数起こっています。いつ避難するべきなのか、止まるべきなのかは非常に判断が難しく、今回のようなシステムは非常に心強いものです。

産総研などでは、今後も質の高いデータを蓄積し続け、さらに検知システムの精度を高め、安価かつ耐久性のあるセンサー開発を行う予定としています。

参考資料

(Marvin編集部)