羽田空港の保安検査場の混雑具合を群衆行動解析技術により予測:NECが「待ち時間予測システム」を導入

課題

旅行や出張で空港を利用する人達の悩みの一つに手荷物検査の待ち時間の長さが挙げられます。特に羽田空港国際線では保安検査場が2か所あるため、時間帯によってはどちらかに利用者が集中してしまうことも少なくありません。そうなると、検査を受けるために長時間並び貴重な時間をロスしてしまいます。

そこで、保安検査場に並ぶ前に検査場の混雑具合を把握できるシステムが利用者から求められていました。

解決方法

羽田空港国際線旅客ターミナルにNECが開発した「待ち時間予測システム」が導入されました。「待ち時間予測システム」は、空港保安検査場内の混雑具合を分析し、利用客がモニターで待ち時間を確認できるシステムです。

「待ち時間予測システム」には、最新のAI技術である「NEC the WISE」が組み込まれ、その技術の一つである「群衆行動解析技術」に基づいて群衆行動から待ち時間を予測します。

この「群衆行動解析技術」は、カメラで撮影した人々の映像から混雑具合を検知する技術です。具体的には、3Dステレオ視覚センサーによって人々の動きや人数を把握し、情報を収集・分析します。そして分析した混雑具合は、空港利用者の目に届く場所に設置されたモニターに映し出されます。

カメラで人々の動きを撮影して人間一人ひとりの外見や動作を認識するAI技術は従来から存在しましたが、NECの「群衆行動解析技術」は人間を「個」として認識するのではなく「群衆」として認識する点が従来技術とは異なります。

従来の「個」としての認識では、人が比較的少ない場所であれば人間の外見や動作を容易に解析できましたが、人が重なり合い、顔や身体が見えないほど混雑した場所では十分に機能しません。そのため、空港のような混雑した場所では、人間を「群衆」として認識する「群衆行動解析技術」が役立ちます。

どうなったか

羽田空港国際線旅客ターミナルに「待ち時間予測システム」が導入されたことで、空港の利用者は予めモニターに表示された保安検査場の混雑状況をみて、いつどちらの検査場を利用するか決められるようになりました。利用者は検査場の混雑が緩和するタイミングまで時間を有効活用できます。

また空港にとっても2か所ある保安検査場の利用者を平準化できるので、よりスムーズに業務を遂行できるようになりました。

まとめ

今後は、AI技術のさらなる活用によってリアルタイムな混雑状況の把握だけでなく、数分後・数時間後における混雑具合の予測も行えるシステムを追加する予定です。さらに、「待ち時間予測システム」に組み込まれている「NEC the WISE」は空港での利用だけでなく、混雑が予想されるイベント会場や災害時の誘導においても活用される見込みです。

参考資料

(Marvin編集部)