不在配送ゼロ化AIプロジェクト:東大、日本データサイエンス研究所らが実証実験合意

課題

個人向け配送における不在配送件数は全宅配のおよそ2割で、走行距離の25%は再配達のために費やされており、これは年間9万人の労働力に相当し、約1.8億時間が1年間の不在配達に費やされています。そして、昨今のドライバー不足と労働生産性の向上は、物流業界のみならず産業界全体の課題となっています。

配達者としては「在不在は届け先まで行ってチャイムを押すまでわからない」、利用者としては不在票を見てから「もう少し遅く来てくれれば受け取れたのにとよく思う」などすれ違いが生じていました。

解決方法

佐川急便株式会社と株式会社日本データサイエンス研究所(JDSC)、東京大学大学院 越塚登研究室田中謙司研究室は、「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に関して3者共同研究開発をすることに合意しました。2020年中実証実験の実施に向けて、共同検討を進めることになります。具体的には、各戸に設置されたスマートメーターから取得される電力データをAIが学習し、配送時刻における在宅予測に基づいて、在宅戸から優先的に配送するルートを自動生成する実証実験となります。

東京大学キャンパス内で行われた実験では、あらかじめキャンパス内の各建物に住宅の電力使用データと在不在情報を模擬的に割り振った上で、電力データのみから最適ルートを提示するシステムの性能評価を行ないました。

https://www.prototekton-web.com/home

どうなったか

本システムを用いる場合と、人が最短経路を判断した場合で配送を繰り返した結果、本システムを用いた場合の配送成功率は98%となり、不在配送は91%減少、総移動距離5%減少しました。さらに、これまで特定されていた「不在」というプライバシー情報が配送者に伝わることがなくなり、より個人情報保護が強化される結果が示されています。本成果は、コンピュータサイエンスの国際学会であるIEEE COMPSAC 2018ICSCA 2019で採択済みです。

まとめ

本実験は、集荷・時間指定・宅配ボックスなど実際の配送条件がない環境で行われ、配送者も配送未経験の実験参加者でした。今回の実証実験の合意により、さらに確証に基づいた結果が期待されます。

参考資料

(蒲生由紀子)