排気からの蒸気量をリアルタイム予測して廃棄物発電を効率化:NTTコムとクボタがディープラーニングを活用した実証実験を実施

課題

近年、地球環境の視点からゴミを焼却する際に発生する熱を利用した廃棄物発電が注目されています。廃棄物発電は再生可能エネルギーのひとつであり、ゴミ焼却時の排熱から高温高圧の蒸気を作り出し蒸気タービンを回転させて発電する仕組みです。

しかし、ゴミ焼却場に投入するゴミの種類や形状によって作り出せる蒸気量は大きく変化するため、安定した発電を維持するのが困難という問題も生じています。そこで、作り出す蒸気量を予測して安定した発電を行える仕組みの構築が期待されています。

解決方法

NTTコミュニケーションズ株式会社と株式会社クボタは、ごみ焼却施設においてディープラーニングを活用した実証実験を実施しました。実験内容は、ゴミ焼却時に発生する熱から生み出す「1分後」の蒸気量をリアルタイムに予測して廃棄物発電の安定化を図るというものです。

このシステムでは、ごみ焼却状況のデータを蓄積し、蒸気量に関係する装置の動作や空気の送り方など300以上のパラメーターを分析します。そのパラメータの中から重要なデータを絞り込み、これらを入力とした予測モデルを構築します。

一連のプロセスにはNTTコミュニケーションズ株式会社が開発したAI解析ツール「Node-AI」を用いています。「Node-AI」には時系列アトリビューション解析技術という技術が使用され、ごみ焼却工程を可視化できるようになります。この時系列アトリビューション解析は2018年8月に開催された人工知能の国際会議IJCAI2018( International Joint Conference on Artificial Intelligence)におけるワークショップAI4IoT (AI for Internet or Things)において発表された人工知能の解釈性を向上させるための技術を基にしています。

時系列アトリビューション解析は、元々は画像認識の分野で提案されたSmooth Gradと呼ばれる技術をNTT Communicationsの研究者が時系列予測の分野に適用したものです。Smooth Gradは、以下のような手法です。

  • ある多次元の値をニューラルネットに入力して、ある出力となったとする。
  • その入力にランダムなノイズを追加して、改めて出力を取り出すと元の出力からずれた出力となる。
  • この元の出力を再現するために、入力をどのように修正すべきかをニューラルネットの内部状態を固定した状態での微分値(出力を入力で微分)を元に計算して、修正量を計算する。
  • このランダムノイズを含む操作を何度か繰り返して、平均した入力の酒精量大きさが、その入力がどの程度重要だったかを表す指標となる。

時系列アトリビューション解析は上記手法を時系列に適用したもので、ある出力(予測値)を得るために、どの時刻のどの入力変数が重要であったを可視化することができます。これにより、所望の蒸気量からずれた場合に、予測に大きな影響を与えている量を計算された微分値を元に適切に変更することで、所望の蒸気量に修正することが可能となります。

どうなったか

この蒸気量予測システムによって、1分先のごみ焼却状況をグラフ化し、どの要素が重要であるかを知ることができるので、施設運用者がリアルタイムに1分先の蒸気量をモニタリングしながら制御できるようになりました。従来では投入するゴミの種類や制御に影響を与える複数のパラメーターによって安定した発電が難しかった廃棄物発電も、安定して発電できるようになったと報告しています。

現在は1分先の蒸気量をモニタリングできますが、今後は5分後や10分後のごみ焼却状況を予測し、より高精度な蒸気量制御を可能にする予定としています。さらに、デジタルツインを活用してデジタル上に現実と同様の稼働環境をもつごみ焼却施設を再現し、より高度な安定化制御技術の開発を目指しています。

まとめ

NTTコミュニケーションズ株式会社は今回のごみ焼却施設効率化のように、ディープラーニングを活用した取り組みを進めています。例えば、ドライブレコーダー解析によって交通事故を自動検知するシステムや、化学工場で作る製品の品質予測システムなどを、ディープラーニングを活用して開発・提供しています。

ニューラルネットワークを用いた予測技術の活用が広がりを見せています。予測の精度が向上すると同時に、何が重要だったかを担当者が見ることができれば、制御も可能になります。「予測」と「制御」は科学技術の両輪ですが、ニューラルネットを活用して、これまでできなかった予測と制御が可能になっていくかもしれません。

参考資料

(Marvin編集部)