マンガのセリフを高精度で自動翻訳「Mantra」

課題

日本の漫画は海外でも”Manga”として広く親しまれ、多くの日本語の読めない人々にも翻訳を通して読まれています。しかしながら、日本で刊行された漫画が海外へ届くまでは、日本語のセリフを外国語に翻訳する作業や、海外へ流通させる作業など多くの工程が必要です。そのため正規の漫画の翻訳版が発表されるまでに、ネット上で日本の漫画の海賊版が出回ってしまうことも少なくありません。

そこで、近年は日本での最新刊や雑誌の発売と同時に海外でもインターネット配信されるサービスも開始しました。これに伴い、日本語で書かれている漫画を英語やフランス語、中国語などの外国語に迅速に翻訳する技術の需要が高まっています。

解決方法

漫画の日本語のセリフを自動的に外国語に翻訳して配信するサービス「Mantra」のベータ版が公開されました。「Mantra」はAI(人工知能)を活用したシステムで日本語の漫画を自動的に翻訳します。

「Mantra」ではまず、漫画の画像から吹き出しの部分を検出し、高精度な文字認識技術によって文字を認識します。そして認識した文字を、機械翻訳を用いて自動的に目的の言語へ翻訳する仕組みです。

漫画のセリフは口語口調なので、中には機械には翻訳が難しい言い回しも含まれますが、「Mantra」は漫画の翻訳に必要なデータを既存の漫画から自動的に抽出し学習するため、漫画向きのより自然な翻訳ができます。

また、漫画には特有の変形した文字や様々なフォントが使われることがあるため、従来の文字認識技術では正確に文字を検出できませんでした。「Mantra」では機械学習によって、漫画特有のあらゆる文字やフォントを認識できる高精度な文字認識技術を活用しているので正確な文字認識が可能です。

どうなったか

従来、漫画の日本語のセリフを外国語に翻訳する作業は人間が目視で行っていたため、手間も時間もかかっていました。しかし「Mantra」を使うと、翻訳を完了して画像を出力する作業まで全て自動的に行うため、従来よりも圧倒的に高速・低コストで翻訳できるようになります。

まとめ

今まで人間の翻訳家が全て行っていた翻訳作業を、AIを活用して自動的に行えるようになると手間や時間が大きく省けるようになります。翻訳先言語の翻訳家や編集者の最終チェックは必要となると考えられますが、よりスピーディに日本で刊行された漫画を世界に配信できるようになります。

しかし、漫画は文字だけを翻訳すればよいといった単純なものではありません。作者が漫画に込めた想いを十分に表現する、ストーリーやキャラクターの感情に沿った口調や語彙選択をする必要があります。今後、漫画自動翻訳の技術は、読者が翻訳された文章だと感じずに日本語で読む読者と同じ感覚で読み進められる翻訳ができるようになるのでしょうか?それとも、人間の翻訳家や編集者との共同作業が必要であり続けるでしょうか?今後の展開に注目です。

参考資料

(Marvin編集部)