糖尿病性腎症の悪化予測モデル:藤田医科大学、第一生命、日本IBMが共同研究成果を発表

課題

糖尿病の合併症のなかでも悪化すると人工透析など治療に大きな負担がかかる糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症のなかでも悪化すると人工透析など治療に大きな負担がかかります。近年、医学における臨床判断の支援に人工知能の導入が進められ、糖尿病性腎症のような疾病についても精度の高い将来予測ができれば専門医の助けになるでしょう。

解決方法

2017年、藤田医科大学、第一生命、日本IBMが共同で、匿名化された藤田医科大学病院の13万人以上の時系列データを、AIを活用して解析しました。そして、日本人固有の特性を踏まえつつ悪化具合を高い精度で予測するモデルが構築されました。

著者らは、糖尿病患者の電子医療記録に基づき、機械学習を用いて糖尿病性腎疾患(DKD)に対する新しい予測モデルを構築しました。まず過去6か月の継続通院患者に関する各種検査値、診療記録、栄養指導記録などの時系列データから特徴を抽出し、6か月のDKD悪化に関連する時系列パターンを見つけるために24の因子を選択しました。そして、ロジスティック回帰分析を用いて、時系列データを含む3,073の特徴を有する予測モデルを構築しました。

どうなったか

検体検査等の検査結果をもとに、腎症を進行レベルによって5つのステージ(第1期から第5期まで順に悪化)に分類し、第1期の軽度な糖尿病性腎症患者について、180日後の病状進行を高い性能で予測するモデルが構築できました。その結果、71%の精度でDKD増悪を予測できました。また、180日後の腎症悪化が、長期的に重篤な合併症の発生率と関連するかどうかについて検討しました。その結果、180日後の腎症の悪化が将来10年間の透析導入や心血管合併症の発症に関連することを見いだしました。

まとめ

医療AIの分野は医用画像に対する病変の検出のほか、臨床データの解析による予後予測も行われ、この成果は後者によるものです。AIによる新しい予測モデルは、DKDの進行を検出し、血液透析を減らすのに寄与する可能性があります。

参考資料

(蒲生由紀子)