機械学習を用いて日常的な生活データから認知症を早期に発見:ジョージ・アンド・ショーン社や北陸先端科学技術大学院大学などの共同研究チームが成果を発表

課題

認知症高齢者の数は450万人を超え、2025年までには700万人と、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。この問題は国内での問題だけではなく、欧米やアジア圏を中心に深刻な問題になりつつあります。特に認知症の段階である軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment )については、早期に検知することで運動や食事などの適切な対応により回復する可能性も示唆されているため、日常生活で早く気付くことが重要とされています。

近年の多くの研究では、歩行速度のような身体活動の特徴に加えて、発話、言語属性、コンピュータアバターとの相互作用のような患者の言語コミュニケーション能力に基づく認知症の自動検出に焦点を当てています。多くの研究は、相互作用行動または身体活動のいずれかを感知することによる認知症の検出に焦点を当てており、両タイプの情報の統合の有効性は、まだ探求されていませんでした。

解決方法

北陸先端科学技術大学院大学(以下、JAIST) 岡田研究室・ジョージ・アンド・ショーン株式会社・NTT西日本・シャープの共同研究により、日常的な生活データから認知症を早期に発見するシステムが開発されました。ジョージ・アンド・ショーン社は、失くし物防止や見守りのために、位置情報や距離をスマホで管理するタグ「biblle(ビブル)」やAIを活用したヘルスケア・認知症予知検知の技術開発をしている企業で、軽度認知障害に着目し、ライフログと機械学習を活用した早期検知のアルゴリズムの開発を続けてきました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000026328.html

この研究成果は、感情(Affective:アフェクティブ)分析コンピューティング分野における世界最大の国際会議であるACII(Affective Computing & Intelligent Interaction) 2019Cambridgeで発表されます。この会議の主要テーマは人間の感情や情緒に関係するコンピューティングやサイエンスです。

この研究では、人間とロボットの相互作用を通して観察された参加者の相互作用行動に基づく「睡眠」「会話」「移動」などの多活動性特徴を用いて、認知症スケールのスコアを自動的に予測するシステムの比較分析を行いました。実験は、被験者の住居内で室内位置測定システムを用いて行われました。毎日の活動を観察し記録するために、室内位置決めシステムを使用し、各参加者は移動型ビーコンを装備しました。そして、異なるアクセスポイントからのBluetooth信号の受信信号強度指標(RSSI)を用いて、自宅での参加者の位置データを収集しました。

実験の中では二つの場面を想定しており、シャープから発売されている通信機能付き小型ヒューマノイドロボットであるRoBoHon(SR-01M-W )を活用したロボットとのインタラクション場面のデータセットや室内での行動を継続的に収集したデータセットを作成しました。インタラクション場面では、ロボットが2時間ごとに話しかけて挨拶したり、クイズを出題しますが、その際の被験者の発声回数などに着目してデータ化としています。また、室内での位置情報を定期的に取得し行動ログとしています。これらのデータを解析・分析を行うことで、認知症高齢者の固有行動を特定し、認知症尺度の高/低スコアを自動的に予測します。また、特定のペーパーテストや、医療ログを用いない利用者負担の低い検知方法を提案しました。

どうなったか

本実験では、得られたデータセットを用いて分類モデルを訓練し、高スケール群と低スケール群を区別することができました。これにより、認知症の可能性の高い被験者を推定することができます。また、高齢者のロボットとの対話や睡眠センサーから得られる日常生活データに対して、認知症スクリーニングテスト(長谷川式認知症スケールテスト)と正相関を持っていることを論文内で発表しています。

ただし、機械学習のラベル付きデータには認知テストのスコアを用いましたが、専門家による診断は行っていないので、モデルが認知症の検出に有効かどうかは明らかではありません。また、今回は屋内で簡単なアルゴリズムを用いて実験を行いましたが、高齢者の正確な位置検出も重要だとしています。記憶障害が日常活動に影響を及ぼすことはよく知られていて、たとえば認知症の人は同じ活動(台所またはトイレに行く)を何度も繰り返します。よって、反復活動のような認知症依存性活動検出システムの開発は今後の研究の重要な焦点です。

まとめ

本論文で記載されている数値は2018年3月時点での実績データをもとに構成されており、現在はさらなる分析により、最大95%の精度で認知症のスクリーニングをすることができるとされています。ジョージ・アンド・ショーンでは、検知された結果を経て、健康寿命延伸のためのサービス開発を続けていくとしています。今後、高齢者認知症の社会課題解決に向けて、機械学習を用いた取り組みの需要は高まっていくかもしれません。

参考資料

(蒲生由紀子・森裕紀)