大停電における企業の危機意識をAIサービスで解析

課題

日本で初めて全域停電が起きたのは、昨年の北海道胆振東部地震です。当時の映像や証言の解析から、北海道では、医療機関の情報共有システムが機能せず、災害時の転院に混乱が起きるなど「医療崩壊寸前」の状態に陥っていたことがわかってきました。さらに、電気に依存していた物流システムが寸断されたことにより、長期間にわたって食料などの供給不足が発生していました。首都直下地震が発生すれば、首都圏では電力の供給能力は半分程度になり、広域で停電が発生するとされています。大停電に備えるためにはどうすればよいのかは重要な課題です。

解決方法

株式会社グルーヴノーツは、停電時における企業の危機意識を、約15000社の停電に関連する報道内容から、独自開発したクラウドAIサービス「MAGELLAN BLOCKS」(マゼランブロックス)を活用して解析しました。深層学習によって言葉の特徴を数値化し企業が呼びかけている言葉から特徴を導き出しました。

まず、文章の意味を組み立てている言葉を抽出し、その言葉に対して深層学習を行い、言葉ごとの特徴ベクトルを計算します。そして特徴ベクトルから、言葉の関連性を解析しました。

どうなったか

グルーヴノーツが行なった解析では、単語の出現頻度のみを解析するのではなく、文章を解析することで言葉の文脈的な関連を捉え、言葉をベクトル空間上の座標として表現しています。これにより、たとえば、「停電」という言葉と関連の深いものは何かという推定を、数学的に表現することができるようになります。「停電」や「影響」と関わりが深いであろうキーワードは「半導体」「ディスプレイ」「基盤」などの精密な制御が必要な製品、輸出入に関わる「港湾」「コンビナート」「クレーン」「倉庫」、日常の暮らしに関わる「給食」「牛乳」「弁当」「ラーメン」などが挙げられます。

この画像はテキストデータをベクトル化し、多次元空間で表現した様子です。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000042403.html

「MAGELLAN BLOCKSのその他の活用事例としては、文章のベクトル化を活用した自然言語のQAシステムがあります。深層学習技術・自然言語処理技術を活用して独自に開発した文書検索エンジンは、言葉の特徴ではなく、文章全体の特徴をベクトル化します。これにより、問い合わせに対して近い意味の文章を瞬時に見つけることできます。日常的に使う自然な言葉で問い合わせを行えば、適切な回答を検索することができます。

まとめ

今回はNHKスペシャルで「大停電にどう備えるか」が特集され、その中で企業の大停電に対する危機意識を探るために、グループノーツのAIサービスが用いられました。「MAGELLAN BLOCKS」は、機械学習やプログラミングに関する専門的な知識がなくても、手軽に機械学習を利用することができるクラウドサービスであるので、誰もが機械学習を使ったビジネスができる未来が近いのかもしれません。

参考資料

(蒲生由紀子)