特許調査員の作業時間を削減:AIが自動で特許調査を行う「AI Samurai」

課題

従来の特許調査は、特許調査員が検索式を立案し該当した特許を全て目視で確認する必要がありました。検索式立案と目視チェックの作業には多くの労力と時間を費やします。さらに、特許調査員のスキルが低い場合はそれぞれの作業に時間を要するため、人件費もかかってしまいます。

また、調査結果は企業の知財戦略に大きな影響を及ぼすにも関わらず、特許調査員のスキルや経験、クセによっても調査結果が異なるという重大な問題もありました。

解決方法

株式会社AI SamuraiはAI(人工知能)が自動で特許調査を行う「AI Samurai」をリリースしました。「AI Samurai」は調査対象の特許の発明概要や請求項案を入力すると、データベース内の特許文献を分析し調査結果を出力するシステムです。

調査対象は、先行技術調査・特許侵害調査・無効資料調査で、日本国内・米国の特許を分析できます。先行技術調査では、調査したい発明内容を入力すると類似文献を評価します。そして国際特許分類であるIPCを認定し類似する文献を5件の類似度の高さを評価する仕組みです。また、調査結果はフィールド上にキャラクターを用いてマッピングされるので、視覚的に知財状況を把握できます。

特許侵害調査で発明内容を入力するだけで類似度の高い順に500件の特許リストが作成されます。特許リストはCSVファイルでダウンロードできるので、Excelまたはパテントマップツールで詳細な調査が行えます。

無効資料調査では無効にしたい調査内容や公報登録番号および基準日を入力すると、自動的に無効化可能性を評価します。さらに、上記の調査結果はすべて調査履歴一覧にリスト化されるため、後から見直すのも簡単です。

どうなったか

先行技術調査では、類似している5つの特許のクレームチャート(請求項)を自動的に並べて表示するため、視覚的に読みやすく類似チェックの目視作業が大変容易になりました。

特許侵害調査は正確性が非常に重要なのでスキルの高い特許調査員による目視が必須です。AI Samuraiでは、調査すべき特許をリスト化したパテントマップツールを生成して利用しり、無効資料調査においても検索結果に基づいたクレームチャートが自動生成されます。これらにより、従来なら1件ごとに時間をかけていた目視作業も省力化が図れます。

さらに先行技術調査と無効資料調査では表示されたクレームチャートをユーザーが評価できます。ユーザーによる評価結果は次回の検索に反映されるため、評価と検索を繰り返すたびにより高精度な特許検索が行えます。また、IPCの絞り込みや単語の重み付けも設定できるので、従来の検索システムよりも簡単に評価対象特許を見つけられるようになりました。

現在の「AI Samurai」の調査対象は日本国内および米国特許ですが、中国特許も開発中となっています。

まとめ

特許調査の結果は企業の知財戦略に大きな影響を与えるため、高精度でなくてはなりません。しかし、人による目視のみでは特許調査員のスキルや経験によってもバラつきが生じ、高精度な結果を得るのは難しいでしょう。

「AI Samurai」は類似性の判定をどのように行なっているかを公表していませんが、自然言語処理技術を応用していると考えられます。特許文書は日常生活で使用される書き方とは異なる独特の様式で記述されますが、特許文書と専門に扱うことで適切な処理が行われると考えられます。類似性に関して、単なる単語の検索でない形で技術や発明の類似性が適切に計算されるのであれば非常に有用でしょう。

今後は、特殊な用途に向けた自然言語処理技術の洗練化が1つのトレンドして発展していくのではないでしょうか?

参考資料

AI Samurai