マカオのカジノ、アルゴリズムを用いてギャンブラーの動向を追跡する技術を検討

課題

日本でも有名なカジノの中心地であるマカオでは、 裕福な投資家から、祖父母や子どもを連れた家族まで、毎月300万人以上がこの地域を訪れています。しかし、ギャンブルの業界は経済的な逆風と、規制当局の監視により世界的から圧力を受けており停滞の兆しもあります。そんな中、カジノ運営会社は成長のための新たな接客方法や売上アップの手段を模索していました。

解決方法

いくつかのカジノ運営会社は、隠しカメラ、顔認識技術、デジタル対応のポーカーチップ・バカラ台(カジノにあるトランプゲームの台)を導入して、何百万人もの客のうち、誰が最もお金を失う可能性が高いかを追跡し始めています。

この技術では、客がギャンブルの場でどのように行動するかを処理するアルゴリズムを用い、リスクに対する顧客の欲求を判断します。一般的にリスク選好度が高ければ高いほど、ギャンブラーは損をする可能性が高くなり、カジノはより多くの利益を生み出す傾向があり、ときにその差を10倍にもなることがあります。

ギャンブルをして損をする可能性のある客を識別する技術は、運営側が彼らがギャンブルを続けられるように特典を提供するターゲットを絞るということでは大きな意味を持ちます。他国の事例では、ドイツのDallmeier Electronics社が開発したシステムで、「価値の高い」と識別された客がカジノに入ったりテーブルに座ったりすると、フロアマネージャに顔認識が通知され、客側にスタッフを即座に派遣することができるようになっています。

また、個々のギャンブラーがバカラのテーブルで何回「サイド・ベット( カジノゲーム本来の進行とは別に行われる余興の賭け)」を賭けたかを追跡することができるシステムもあります。サイド・ベットを好むギャンブラーは、平均的なギャンブラーと比較して、カジノで約10倍の利益を生み出すことが知られています。

この技術は、ディーラーとプレーヤーの共謀などの不正を検知するのにも役立ち、ディーラーのスピードと正確さを追跡して、パフォーマンス管理ツールとしても利用できます。さらに、 物体にタグを付けるRFID (Radio Frequency IDentification:無線周波数による識別)技術をチップやテーブルに組み込み、プレイヤーのデータを保存するシステムの導入の検討も一部の会社ではあります。 そうなると最終的に、カジノ運営者は、各プレイヤーがカジノで過ごした総時間、賭け金の額、リスク選好度、残りのチップ、過去の不正行為、純資産など、いくつかの指標を組み合わせて、各プレイヤーを評価することができるようになります。

どうなったか

カジノに防犯用の監視カメラが設置され、不正行為が検知されるのは珍しいことではありません。しかし、これらの新しい技術によって、すべての客の追跡と評価がさらに一歩進められ、貴重なデータが蓄積されることになります。

しかし、この技術の導入を進めるかどうかをめぐる議論の中で、高額消費の顧客はおそらくそうしたデータを見られたくない、また、政府や法執行当局が収集したデータへのアクセスを求めてくる可能性があることも懸念されています。

まとめ

現在、中国のテクノロジー企業は、新製品の設計や医療保険の拡大など、さまざまな目的で消費者データを利用しており、中国政府も顔認識を活用した監視カメラの全国ネットワークを持っています。この新技術は、カジノプレイーヤーの行動を監視する範囲を拡大するものであり、法律を侵害する可能性もあるようです。日本でも2016年に統合型リゾート(IR)整備推進法案、通称「カジノ法案」が成立し、これからカジノの建設が注目されていますが、そうした技術の導入には慎重にならざるを得ないでしょう。

参考資料

(蒲生由紀子)