AIによる群衆カウント:香港デモの参加人数を265,000人と推定

課題

従来の人物をカウントする技術では、人の顔を検知できなかったり、体の一部が隠れると認識できないなど、群衆の人数を解析するのに十分とは言い難い課題がありました。大規模な群衆が集まるイベントでは、混雑による事故も発生します。その対策に新たに用いられ始めているのがAI技術です。

解決方法

群衆の人数を画像から正確にカウントするため研究開発は複数の試みが知られています。

セントラル・フロリダ大学コンピュータビジョンセンターでは、コンピュータビジョン技術に基づくアプローチにより非常に多くの数の密集した群衆の数を正確に捉えるソフトウェアを開発しています。

既存のデータセットは低密度から中密度であり、ビデオの形で使用します。数を推定するための最も単純なアプローチは人の形の検出ですが、密集した群集の画像を見ると、体はほとんど完全に覆い隠されており、数えたり分析したりするための頭だけが残されていることがわかります。そこで、データセットで学習したモデルを用い、頭部に対応するフィルタのみを画像に適用します。この技術により、画像中の2319人の群衆を2494人と推定するなど、非常に高い群衆密度に対しても高い精度での人数カウントを実現しています。

https://www.crcv.ucf.edu/projects/crowdCounting/index.php
非常に高密度に撮影された群衆も精度よく推定することができる
https://www.crcv.ucf.edu/projects/crowdCounting/index.php

2018年の隅田川花火大会では、警視庁はカメラの映像からのAIによる人数計測や移動予測システムの実証実験を行っていました。実証実験に使われたのは、Panasonic社が開発したAIを用いて映像分析を行うカメラです。カメラで映し出された映像から、AIにより人物や車両等を検知・区別し、特定した人物を映像内で追尾することも可能となります。

どうなったか

ニューヨークタイムズ紙によれば、2019年7月の香港でのデモにおいても、AI技術を用いた群衆カウントがなされました。

香港大学のポール・イップ教授 (社会科学) は2003年以来、1997年に香港が英国から中国に返還された記念日である7月1日に毎年行われるデモの規模を集計してきました。イップ氏は今回、より確実な推計を行うことを期待して、テキサス州立大学のエドウィン・チョウ氏、地元テクノロジー企業C&RワイズAIのレイモンド・ウォン氏と協力し、AIを使ってデモの人数を計測しました。

チームのソフトウェアは、群衆の人々を追跡するために、異なるパラメーターを持つ複数のモデルを実行しました。人々は、ビデオのフレーム内でいわゆる「カウントライン」を越えたときにカウントされます。チームは一日中結果をモニタリングし、人の密度、流れの速度、日照条件などの変数に対応しました。また、このプログラムを産業用コンピューターではなくiPadで実行するように書き直したことで、チームはより多くの場所に装置を設置することができました。

香港デモにおいて、主催者発表では55万人が参加、警察によると最大では19万人だといいますが、研究者チームはAIと手作業を組み合わせ、265,000人が行進したと結論づけました。

日本では2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックに間に合わせるために、警視庁としては群衆の動きのなかで放置されたモノを特定し、検出できるよう学習させ、将来的にはテロ活動対策に役立てる方針です。

まとめ

多くの人々が注目するイベントにおいて、裏側ではAI技術が応用されはじめています。このように、AIによる画像認識技術は政治的、学術的にも大きな意味を持つようになりつつあると言ってよいでしょう。

参考資料

(蒲生由紀子)