AIで家賃推定を高精度かつ自動で行うシステムを大東建託などが開発:試験運用を開始

課題

物件の家賃を算出する際、従来は人手によって査定対象となる物件に類似した物件の家賃を参考にしたり、また査定対象の周辺物件の家賃や設備、立地条件などを考慮しながら適切な家賃を算出していました。

しかし、そのためには膨大な物件情報を収集する必要があり、またデータの解析にも大きな労力が必要になります。

解決方法

従来は数多くのスタッフが時間と手間をかけて行っていた家賃査定を、AI(人工知能)で自動化、効率化を図る取り組みが行われています。

この取り組みを行っているのは大東建託株式会社で、同社は2018年6月より過去のデータに基づいて家賃を推定する査定システムを、首都圏の一部エリアのみを対象に試験的に導入しました。このシステムは東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)不動産情報科学研究室の清水千弘特任教授と、同社の賃貸未来研究所の宗建氏によって共同開発されました。

今回発表された家賃査定システムでは、大東建託が長年かけて蓄積した賃貸募集広告のデータから入力となる「最寄駅」、「広さ」、「築年数」などの情報を抽出して、重回帰分析を適用します。また、「最寄駅までの距離」も推定して入力としています。この他にも、査定対象に類似した物件を抽出したり、また平均的なデータ値から逸脱した外れ値を自動的に除去するロジックなどを組み込んでいます。

本システムの精度を示す指標として、誤差率中央値(MER)が用いられていますが、これは機械学習モデルの推定精度を示す代表的な指標として知られています。具体的には、推定した家賃額と、直近での実際の成約価格との差額を、実際の価格で割った値(誤差率)の中央値を指すもので、MERの値が小さいほど精度が高いことを意味します。

本システムのMERは5%を達成していますが、これはつまり、査定物件の半数の家賃額を、5%以下の誤差で推定できることを意味します。

どうなったか

従来の人手を介しての家賃査定には、多くの人的リソースや時間が必要になり、大東建託では全国約1,000人のスタッフを動員して査定を行っていました。ですが、本システムの導入によって家賃査定のプロセスが自動化され、大幅な業務負担の軽減が見込まれています。

また、何故この家賃額になったのかに関して明確な根拠を提示可能になるため、より安心・安全・安定した賃貸経営の提供が可能になると述べています。

現時点では試験導入の段階ですが、同社によると2020年度からの本格導入を目指しているとのことで、今後は対象地域を全国に拡大するとともに、最寄り駅が存在しないエリアなどにも対応していくとのことです。

まとめ

物件の家賃査定は数多くのプロセスを経る必要があり、類似物件や周辺物件の家賃などに関する膨大なデータが必要になり、これらを参考にしながら適切な家賃額を決めていました。

家賃は往々にして安くない金額であり、査定には高い精度が求められます。そのため数多くのスタッフを動員して、長い時間と手間をかけて取り組む必要がありました。ですが、家賃査定のプロセスをAI(人工知能)で自動化することで、従来かかっていた人的・時間的コストを大幅に削減できます。

大東建託と東京大学とが共同開発した家賃査定システムでは、AI(人工知能)によって適切な家賃額を高い精度で推定することが可能で、同システムによる誤差率は適性家賃額と比べて5%以下という正確さを実現しています。

従来の、人手による家賃査定と殆ど同じ精度のパフォーマンスをほぼ自動化することでコスト削減が可能になり、ひいては物件の家賃の低額化を行える可能性もあります。AI(人工知能)による自動化のメリットを示す好例です。

参考資料

(Marvin編集部)