ドライバーの運転状況をAIとIoTで可視化:危険運転を防止して事故発生を防ぐ「DRIVE CHART」が提供開始

課題

事故の削減は長年の課題です。国内では、年間で47万件以上もの交通事故が発生しており、事故の原因の90%はヒューマンエラーと言われています。近年では運転支援技術の普及もあって死亡事故の数は減少していますが、以前として交通事故のリスクは高いままです。

ニューマンエラーによる事故削減の切り札である自動運転車の開発はテスラやGoogleを始めとした企業を中心に世界的に進められており、日本でもオリンピックに向けて各社が開発を競っています。しかし、高速道路などのシンプルな環境では実用に近い性能に到達しつつありますが、人や他の自動車が多くいる環境では課題が残っています。

これに対して、人による運転を技術によりサポートするシステムの導入も進んでいます。例えば、スバルのアイサイトなどの自動ブレーキシステムは画像認識により動作する仕組みで、効果も高く普及が進んでいます。このような人間支援系のシステムのアプローチは、完全な自動運転へ移行できていない現在、非常に重要です。周囲の環境や運転状況に応じた適切な支援を人工知能技術により行うアプローチは有望に思えます。

解決方法

交通事故を削減するための手段として、AI(人工知能)とIoTを活用したサービスが、株式会社ディー・エヌ・エーが2019年6月4日に発表した「DRIVE CHART」です。

DRIVE CHARTでは、ドライバー自身による自己改善と、人工知能システムのフィードバックを通じて交通事故を減らすことを目的にしています。同システムでは、車内外に設置したカメラとGPS、加速度センサーによってドライバーの運転状況を可視化します。車載機器を通じて収集したデータを、同社が開発した画像認識技術によって分析し、ドライバーが居眠り運転や急発進、急ブレーキなどの危険運転をしていないかを検出します。

収集したデータはドライバーと安全管理者に共有され、ドライバーは危険運転が検出された場所を映像で確認できます。また、安全管理者はドライバーの状況をデータに基づいてリアルタイムで確認し、もしドライバーが危険運転をしていれば声掛けをしたり、映像による指導を通じてアドバイスを行います。

同サービスを用いた実証実験が2018年4月から10月にかけて行われましたが、実験時期の過去5年間の平均的な事故発生率に比べて、実験では事故率がタクシーであれば25%、トラックでは38%削減しています。

どうなったか

車載機器で収集した各種データをAI(人工知能)が分析し、ドライバーの運転状況を可視化します。ドライバーが危険運転をしていないかを客観的なデータを通して把握できるので、事故の可能性やリスクを察知しやすくなります。

これらのデータを管理者と共有することで、危険運転をしているドライバーの抽出を迅速に行えるようになり、交通事故のリスク低減が見込まれています。

まとめ

交通事故の原因の大半はヒューマンエラーと言われていますが、居眠り運転や急発進など、人間による運転は往々にして危険を伴います。

商用車向けの事故削減サービスのDRIVE CHARTでは、車載カメラやGPSによって得られた各種データをAI(人工知能)が分析して、ドライバーの状況を可視化します。データはドライバーと安全管理者の双方が共有し、必要に応じて映像や声掛けなどを通じて注意喚起します。また、ドライバー自身が能動的に運転技術を改善するための機能も備えており、ドライバーと第三者による管理を通して、交通事故削減を目指します。

画像によるドライバーの疲れや居眠り検出に関しては研究が進んでいます。今後は人工知能技術が安価で高性能になることで、商用車だけでなく一般車にも運転支援技術や警告システムを搭載していく方向に進むでしょう。

参考資料

(Marvin編集部)