作物の病気を自動診断できるスマホアプリPlantMD:社会貢献のためアメリカの高校生が開発

課題
農業において、作物の病気を早期に発見して適切な対策を行うことは非常に大切です。しかし、作物の種類は多く、また病気の種類も多いため、一度見逃してしまうと影響が大きく、天候の厳しい地域や貧困地域では生死に関わる問題です。
もし、自動的に作物の育成状況の把握ができる安価なシステムがあれば、農業の効率性をあげることに繋がります。また、農学者や熟練した農業従事者の少ない発展途上な地域でも、特別な知識のない人々でも不作のリスクを低下できます。このような課題は、世界中の貧困対策にも貢献できるでしょう。
解決方法
アメリカの高校生だった、Shaza MehdiとNile Ravenellの二人は、スマホで撮影した植物画像から、植物の種類とその病気(あるいは健康か)を識別するシステムを構築しました。画像と作物の種類と病気のラベルのペアは、ペンシルバニア州立大学が公開しているプロジェクトPlantVillageが提供する画像データセット(現在では権利上の問題から公開中止)を使用しています。また、識別器はTensorflowを用いて深層学習モデルを開発し、データセットから学習して作成されています。
どうなったか
このシステムはPlantMDとしてアプリ化され、Google Playからダウンロードして無料で使用することができます。
PlantMDではリアルタイムで識別を行い結果を表示することができます。識別性能に関する情報や分類するラベルやその数などの情報は公開されていませんでしたが、ダウンロードして試したところ、ノイズになるような身の回りの非植物画像に対して様々なラベルが低い確信度(確率)で表示されました。何も表示されない場合もありますが確信度が低すぎる場合のようです。表示されるラベルとしては、例えば、tea root rot(茶の木:根腐れ)、eggplant healthy(ナス:健康)、apple maggots(りんご:ウジ虫)、rice bakanae(コメ:馬鹿苗病)、banana anthracnose(バナナ:炭疽病)、mushroom green mold(きのこ:青カビ)などがみられました。
また、画像検索で見つけた病気の作物の画像をPC画面上から撮したところ、対応する病気のラベルが高い確率で表示されました。
まとめ
画像認識により作物の病気を識別するシステムを紹介しました。このようなシステムがスマホアプリとして無料で提供されることは、非常にインパクトのあることです。発展途上国での農業の発展には適切な農業指導が欠かせませんが、あらかじめ自動認識システムによりある程度のあたりがつけられるのであれば、現地の農業従事者のみで対応できる範囲も広がるでしょう。技術を考える上で、効率性だけでなく、社会貢献にも目を向けるのは大切なことかもしれません。
参考資料
- Student develops an AI app to diagnose plant diseases [UGA TODAY]
- plantMD [Google Play]
- PlantMD
- AI takes root, helping farmers identify diseased plants [Google]
- PlantVillage [公式HP]
- イネばか苗病 [愛知県HP]
- 「炭疽病(たんそびょう)」から植物を守る!5つの予防方法 [Love Green]
- 菌床しいたけやってて困る「青カビ」に負けない管理方法
(森裕紀・蒲生由紀子)