機械学習を用いたバッテリーの正確な寿命予測(Nature Energy誌論文)

課題

電気自動車やパソコンの電源を担うリチウムイオン電池などは実は、複雑な非線形システムとなっています。そのようなシステムの寿命を正確に予測することは、技術開発の加速のために重要です。しかし、電池の寿命に影響する要素を調査するには、多様な劣化メカニズム、デバイスの変動性、動作条件なども大きな課題となって、長い時間がかかり、開発も困難でした。

解決方法

安全で長寿命の電池を開発するには、電池寿命を予測するための方法が必要でした。そこでKristen A. Severson 氏らは、nature energy において、電池寿命の初期段階に収集した放電・充電サイクルのデータを使用することで電池寿命を正確に予測する機械学習モデルを構築できると報告しました。

どうなったか

まず、急速充電の条件の下で回帰した124個の市販のリン酸鉄リチウム/黒鉛電池からなるデータセットを生成しました。充電初期からの放電電圧曲線を使用して容量劣化を予測するため、回帰による予測と分類に機械学習ツールを適用しました。データセットはこちらから、データ処理用のコードはこちらから見ることができます。Severson氏らは、さまざまな急速充電条件(同一の放電条件)を用いることで広範囲のサイクル寿命(150〜2,300)のデータをデータセットに取り込むことができました。

その後、研究チームは機械学習を使用してデータを分析し、それによって電池の寿命を正確に予測できるモデルを作成しました。 電池が明らかに容量低下の兆候を示す前の電池に関してデータを分析しました。最良のモデルは、研究において電池の約90.9%の充電回数の寿命を正しく予測しました。 また、実験データの最初の5サイクルからのデータを分析して、電池を短寿命または長寿命のどちらかに分類も行い、この場合、モデルの予測の約95%が正確でした。

https://www.nature.com/articles/d41586-019-01138-1#ref-CR1

まとめ

機械学習を使用したモデリングはリチウムイオン電池の予後予測に有望な手段であり、電池技術の開発、製造に役立つ可能性があります。どのような要素が長寿命化に重要化がわかれば、技術開発にも役立つでしょう。

電気自動車の価格はバッテリーコストが下がり2022年までにエンジン車に優る競争力を獲得するの記事では、2022年には電気自動車はエンジン車と競争できる価格になり、さらに建設現場、船舶、航空機など他の交通手段にも影響が出ると報じています。そこでもより良いバッテリーが待望されるとしていますが、2022年までの数年間でそこまでの進歩はあるでしょうか?

参考資料

(蒲生由紀子・森裕紀)