機械学習を用いた「非常に美味しいバジル」の栽培法:MIT、ハーバード大学、米Cognizant Technology Solutions社の研究チームが実現(PLOS ONE論文)

課題

マサチューセッツ工科大学(MIT)、ハーバード大学、米Cognizant Technology Solutions社の研究チームは機械学習を使って「非常に美味しいバジル」を作ろうと研究を重ねてきました。農作物は害虫、気候変動などに左右され、その風味がその時々により変わってしまいます。また、どのような環境要因がバジルの風味を変化させるのかもあまり明らかになっていませんでした。遺伝子操作を行わず、生育条件のみを最適化させて美味しいバジルを作ることを、研究チームは目指していました。

解決方法

研究チームはMITメディアラボに設置された栽培環境において、バジルを育てながら化学センサによるデータに基づいて光や湿度の条件などを最適化しました。これにより、バジルの風味を生み出す条件を見つけ出しました。この成果はオープンアクセス誌PLOS ONEで発表されています。

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0213918

実験環境は改良された輸送用コンテナ内のユニットで、2000株のバジルを光の色や強度、照射時間を変えて育てることにより、容器内の温度、光、湿度、その他環境要因が制御されることになります。味覚は嗅覚とも関係するためこの研究では、空気中に拡散する臭い物質をセンサにより計測し、臭い物質が最大となるように最適化を行いました。この化学データ分析にはガスクロマトグラフィー質量分析法を用いています。

最適化のアルゴリズムとしては、サロゲート最適化が使用されています。サロゲート最適化は、回帰モデルやニューラルネットワークなどで実験データから現象の予測モデルを作り、そのモデルを元に最適化計算を行う手法です。この研究では、サロゲートには多様なタイプのデータを同時に扱うことができるため、異なるセンサや条件を統一的に扱うことに適したシンボリックデータ回帰分析法、最適化には進化的アルゴリズムが使用されています。

どうなったか

直観に反し、1日24時間植物を光にさらし続けることによって最高の味が生み出されることが示されました。この技術によりどのように植物の病害虫防除能力向上させるか、さまざまな植物が気候変動にどう影響されるのか今後も研究していくとしています。また、著者らは、植物と環境の相互作用を理解できるように、デジタル化されたツールの構築や、他の植物への拡大、さらに将来的には植物と環境の相互作用のデジタル化を目指し、オープンソースとして公開して農業研究に適用したいと述べています。

まとめ

コンピュータ制御環境による農作物の成長環境構築というものは、将来の農業にとって今後も注目すべき有望なアプローチです。確かに、この実験で得られたバジルの最適な「24時間の光周期」は機械学習を使わなければ発見が困難なものでした。しかし、ドイツの多国籍企業Singla氏によると「似たような手法はすでにいくつかの農業施設で利用されており、私たちがさまざまな野菜の風味を理解するために機械学習は多用している。しかし機械学習は温室効果を高めるための強力なツールだが、野外ではあまり役に立たない」そうなので、実際の導入におけるメリットや課題はまだまだ検討すべきものが多いでしょう。

参考資料

(蒲生由紀子・森裕紀)