長崎で漁業でのAI活用進む?:マグロ養殖での負担軽減や市場での魚種の分類自動化も

課題

漁業では様々な仕事が人手によって賄われています。

巻き網漁などの複数の魚が混ざった状態で水揚げされるような量では、市場での魚の大きさや種類による分別の作業をします。分別の作業は、立ち仕事で大変なだけでなく、似たような魚を分ける知識と経験が求められ、機械化は大きな課題となっています。

また、マグロ養殖には多大な労力がかかっており、例えばMarvinでもすでにマグロ養殖における個体数に関する自動計測を紹介していますが、そのほかにも赤潮の兆候をとらえるためのプランクトンの観察など様々な仕事が自動化されていません。

長崎県は平成27年で北海道についで二位の全国7%の漁業生産高を誇り県の代表的な産業となっていますが、近年の高齢化から作業者の現象が見込まれていて、技術による対応に迫られています。

解決方法

KDDIと長崎大学を含むグループは五島列島におけるマグロ養殖でドローンや人工知能による実証実験を行い、また長崎県に設置された佐世保高専では魚種の自動識別研究が行われています。

KDDIのニュースリリースによると、マグロ養殖では様々な作業がありますが今回の実証実験では、「ドローンを活用した多地点・多深度採水」、「ディープラーニングを用いた画像解析による有害プランクトンの判別」、「ドローンによる空中からの赤潮分布状況の把握」、「クラウド経由での漁業者への赤潮状況の早期通知」などが試行されました。

また、佐世保工業高等専門学校の電子制御工学科5年、志久寛太さんは、佐世保魚市場(相浦町)の協力を得て、魚の分類を AI が行い機械で実際に振り分けるシステムを制作しました。システムは魚の写真を撮影し画像認識を行う部分と、アームを使って魚を振り分ける仕分け装置部分によって構成されています。

画像認識部分にはディープラーニング(深層学習)を用いて、アジ、サバ、イワシの3種類の魚を見分けることができます。学習には2000枚近くの撮影した写真を利用しました。

どうなったか

グループによると、マグロの養殖実験は成功であったとしています。また、魚種の判別実験では、3種類の魚の認識の精度は100%になりました。マサバとゴマサバといった、似た種類の魚も見分けられるようになっています。

まとめ

Marvinでは、稚魚を分別するシステムマグロ計数システムなど漁業におけるAI活用について報じてきました。前者は出荷に適したサイズかどうかを知りたいということで主に魚影面積を使って魚を分別していましたし、後者ではマグロの魚影パターンに基づいて数を数えていました。また、漁業目的でなくても水族館釣り場で魚の種類を見分けるためのアプリも開発され、娯楽目的であれば十分な精度を持つようになったことも紹介しています。

プランクトンを含む海水を画像により分析して赤潮の発生を予測したり、魚の種類を見分ける技術は既存の画像認識の技術を素直に使用していると考えられますが、今後はこのような現場のニーズに即した応用がさかんになっていくでしょう。

参考資料

(Marvin編集部)