脳MRI画像から軽度認知障害からアルツハイマー病へ3年以内に進行する患者を推定:ERISAと滋賀医科大学が共同で特許取得

課題

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、「会話をしている中で、同じ話をすることが多くなった」とか「お金の計算やスケジュール管理ができなくなった」などの軽度の症状が複数現れた状態などから医師が診断する障害ですが、この状態から3年以内に三分の一、あるいは5年以内に半分がアルツハイマー病等の認知症へ進行するとされています。MCIから認知症へ移行する患者があらかじめ特定できるのであれば、治療成績の向上が見込まれます。

アルツハイマー病の早期には、短期記憶に関係する海馬の萎縮やアミロイドベータと呼ばれる物質の増加、側頭頭頂葉や後部帯状回の血流低下などの兆候が現れるとされています。現在、様々な観点から自動診断が試みられていますが、現在の画像認識技術は医師が行なっている画像診断を精度よく自動化することが期待できます。

解決方法

株式会社ERISAと滋賀医科大学が進行性MCIの識別システムに関する特許が成立したと発表しました。プレスリリースでは、この特許により進行性MCIを脳MRI画像、年齢、性別のみから推定できるとしています。

現在、特許情報を見ることができないため推測になりますが、3次元のコンボリューショナルニューラルネットワーク(3D-CNN)などを用いればこのような解析は可能になります。MRIデータはDICOM形式と呼ばれる標準化されたデータ形式となっており三次元のボクセル表現となっています。これを標準脳にアライメントした上でボクセルを直接扱える3D-CNNなどを用いて、数年後の予後を出力とするモデルとします。このモデルをデータに基づいて訓練すれば、アルツハイマーとなる確率を出力させることができます。また性別は、性別ごとに別々のネットワークとして学習しても、入力として二値のデータを与えても同様の効果を得ることができます。年齢に関しては、データの規模によりますが、入力として与えた方が効率的でしょう。

どうなったか

ERISA社はこの特許技術を用いて 島根県において治験を行う可能性を示唆していますが、具体的な計画は明らかになっていません。

まとめ

今回は、認知症の初期症状を示したMCIの患者が実際に3年後に認知症となる確率を出力するシステムが特許として成立したプレスリリースを取り上げました。

この例のように、MRI画像と認知症の関係などすでにある程度明らかとなっている医学的事実に関して、より精度の高い診断を目指す人工知能システムの開発は進んでいくと考えられます。医療分野では、MRIやレントゲンのデータなどがすでにデジタル化され、診断結果としての電子カルテやレセプト情報など質の高いデータを集めるための素地が整っています。倫理的な問題を排除した上で、これらのデータを活用することは高齢化社会にとって重要な課題となるでしょう。

参考資料

(森裕紀)