加速度センサに機械学習モデルが内臓:データに基づくモーション識別をセンサ内部で実行可能

課題

近年話題になっている機械学習は、ニューラルネットワークを用いた大規模なデータと計算に基づいて「人間を越えた」といった成果がニュースになります。しかし、少数の入力とデータ数だけでも有用な機械学習活用は様々に考えられます。

データや識別モデルなどを大型の計算機に頼ることなく現場で機械学習し、実行するエッジコンピューティングを呼ばれますが、その究極はセンサそのものに推論機能を持つことでしょう。様々なセンサが生データだけでなく、より高度な特徴量や識別結果を出力できるようになれば、省電力かつ複雑なシステムを現場で組むことができるでしょう。

解決方法

STマイクロエレクトロニクスは6軸(x,y,zと三方向の回転)加速度センサに機械学習用コアを搭載して、学習したモーションが現れたかどうかを出力するLSM6DSOXを発表しました。このセンサはスマートホンなどに容易に組み込みアプリで活用することが可能としています。

どうなったか

加速度によりモーションを検出する場合、動作が早い場合にはそれに応じたサンプリング周期でデータを取得する必要があり、モーションを推論するためのマイコンなどの計算機が別に用意されている場合、十分な解像度(場合によって10bit)を伴う高速通信(場合によって100Hz以上)が必要になります。センサ内部で推論ができれば、モーションの推論結果のみを通信するだけで済むことから都度のビット数と通信の頻度を少なくすることが可能です。

発表によると、このセンサはフィットネス・データ、健康モニタ、携帯型ナビゲーション、落下検出などの動きの伴うアプリへの応用を目指しています。搭載されている機械学習コアにより加速度の生データの通信が外部と必要なくなることから、通信量と通信頻度を少なくすることができ、さらなる消費電力の削減が期待されています。

まとめ

センサ内部でモーションの推論が可能なセンサを紹介しました。

今後、エッジコンピューティングと呼ばれるデータを大型の計算機へ転送することなく現場で推論を行うシステムが増加するものと考えられます。様々な場所で様々な粒度の認識を行いそれらを適切に統合させながら、通信量や計算量の削減を行なっていくことが期待されます。

End-to-Endと呼ばれるような、センサ値から意思決定まで一気通貫のシステムの研究開発も進められると同時に、モジュール化された機械学習システムを適切に組み合わせて統合するシステムも模索され、技術者の腕が試されることになるでしょう。

参考資料

(森裕紀)