集団発生したサルモネラ菌の発生源となる動物を遺伝子情報により識別:ジョージア工科大学グループがランダムフォレストによる機械学習で実現

課題

食中毒の原因となるサルモネラ菌は動物の常在菌として内臓などに存在していますが、食品の中で増殖し人間の体内に入ると嘔吐などの激しい症状を引き起こします。薬剤への耐性を持つ種類も発見されるなど、感染後の治療とともに集団感染がさらに広がらないための対応が必要になります。しかし、その菌が実際にどの経路で食品に混入したかがわからなければ、感染源の隔離ができず効果的な感染拡大防止ができません。

現場で手に入る遺伝子などの情報から感染源となった動物種が特定できれば、その結果に基づいた対応を取ることが可能です。

解決方法

ジョージア工科大学の研究グループが遺伝子からサルモネラ菌の一種であるネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)の発生源を特定する判別モデルを開発し、2019年1月Emerging Infectious Diseases誌に発表しました。

サルモネラ菌には2600の血清型(serotypes)があり、その中の1つであるネズミチフス菌は1960年代以来アメリカ政府に報告されたサルモネラ菌集団発生の約1/4を占めています。また、本来ネズミが宿主となるネズミチフス菌は、他の動物種にも感染して菌血症や食中毒を起こしたり、多剤耐性であるSalmonella Typhimurium DT105 というネズミチフス菌の一種は公衆衛生上大きな問題となっています。

研究グループでは、発生源となる動物の分かった1300個のネズミチフス菌の遺伝子をランダムフォレストを用いて判別モデルを学習させました。遺伝子情報は、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のPulseNet network、アメリカ食品医薬品局(FDA)のGenomeTrakrデータベース、FDAの部門である抗菌薬耐性モニタリングシステム(the National Antimicrobial Resistance Monitoring System)から提供された小売肉の3つのグループから収集しています。

どうなったか

83%の精度でネズミチフス菌の発生源となる動物を特定しました。特に家禽類とブタにおいて最も高い精度で、牛と野生の鳥類でも高くなりました。また、認識モデルは認識の精度が良いか悪いかについても判断でき、精度が高いとされた場合には92%の割合で正解しました。

まとめ

サルモネラ菌の一種であるネズミチフス菌の発生源となる動物を特定するモデルについて紹介しました。食中毒菌の集団感染は度々報道されますが、様々な角度からの予防や感染拡大防止策が必要となります。研究グループは、今回の研究は概念実証(Proof of Concept)の段階で実用化のための研究を続けたいとのことですが、様々な領域で遺伝子に基づく判断が簡便かつ迅速に行えるようになれば、食品政策だけでなく医療などにも大きな影響を与えることになるでしょう。

参考資料

(森裕紀)