小さなダニを機械学習で発見:養蜂をサポート

課題

養蜂家にとってミツバチヘギイタダニによるバロア病は、成虫の矮小化が起きたり、蜂児が成長途中で死ぬことがあるため、殺ダニ剤などによる対策が必須となる病気です。放っておくと巣の崩壊にも繋がるため、日本でも農林水産省の届出家畜伝染病に指定されています。
しかしミツバチヘギイタダニは大きさが1mm〜2mm程度と小さいため、早期に発見するには顕微鏡を使用するなど手間がかかっており、特に多数の巣箱を管理する養蜂家にとっては課題となっていました。
解決方法

スイス連邦工科大学ローザンヌ校のJean-Philippe Thiran教授の学生チームは、機械学習を利用して画像内のダニの数を数えるシステムを開発しました。
まず何千もの画像をコンピューターにスキャンさせ、ダニの画像のデータベースを作成しました。そして具体的な手法は公開されていませんが、機械学習を使って、養蜂家のフィードバックを得ながら精度を高めました。

このシステムで難しかったのは、ダニを検出するための画像はスマートフォンで撮影されるためあまり明確ではなく、屋外のため光が強すぎるようなことがあったということです。
どうなったか
これまで目視でカウントしていたものが、このシステムにより数秒でカウントできるようにしました。
また、巣箱ごとにQRコードを発行して、QRコードと一緒に撮影をしてもらうという工夫をしています。これにより検出されたダニの数が時系列で管理ができるようになりました。今後は、このデータを他の養蜂場と共有することでタイムリーな対策が可能になったり、寄生虫抵抗性のあるミツバチの種を特定することが期待されています。
まとめ
画像の中からダニを検出し、養蜂家をサポートするシステムを紹介しました。
人間が「頑張れば見つけることはできるけど、結構見つけるのが大変なもの」を見つけるのは機械学習の得意分野で、異常検出や検品の分野などで多数の応用がされています。関連してMarvinでは微小な化石の発見やパンの識別などを紹介しています。
近年ミツバチの大量死が起こっていますが、大きな原因の2つが農薬とこのバロア病と言われています。ミツバチは世界の1/3を受粉しているとも言われ、なくてはならない存在です。
今後はこのシステムを改良し配布していくということで、どんどん広まっていって欲しいと思います。
参考資料
- Using artificial intelligence to save bees
- 機械学習でミツバチを救え[TechCrunch Japan]
- 届出伝染病 « 法定伝染病・届出伝染病[一般社団法人 日本養蜂協会]
- ミツバチがいなくなったら、いったいどうなるの?[国際環境NGOグリーンピース]
(Marvin編集部)