設計最適化技術で剛性の向上と重量の低減を実現:JFEの取り組む薄板構造物でのトポロジー最適化

課題

環境負荷低減のためのCO2排出量の削減や燃費性能向上など、様々な課題を解決するために乗用車の軽量化が望まれています。一方で、乗用車の構成材料を単純には薄肉化するだけでは十分な強度を確保することができず、安全性の面で問題が発生します。構造物の強度は保ちつつ重量を軽量化するための設計手法が求められています。
このような課題に対して、JFEスチール株式会社(以下、JFE)は、乗用車の鋼板においてより少ない重量で高い剛性が発揮可能な部品形状を設計するための「トポロジー最適化技術」を開発しています。JFEのトポロジー最適化技術はスズキ株式会社や三菱自動車工業株式会社の乗用車開発に採用されるとともに、第9回クルマの軽量化技術展において披露されました。

解決方法

トポロジー最適化技術とは、いくつかの拘束条件を順守した状態で構造物の位相構造を変化させる技術のことです。ここで位相構造とは構造物の密度に対応しており、例えば構造物が利用される状況での荷重や変形量を拘束条件とし、構造物の形状を変化させることで重量や強度を最適化します。トポロジー最適化のための手法は様々なものが存在しており、対象となる構造物や条件に応じて選択することが可能です。しかしそれらに共通する考え方は、構造物とその周辺領域をメッシュ構造によって分割し、構造物の材料がない領域の空間分布を変形形状や強度を保ちながら最適化するということです。詳しくはこちらの資料をご覧ください。
JFEのトポロジー最適化技術の特徴は、これまで難しいとされていた薄板から構成される乗用車の車体構造物へ適応可能であることです。またこのトポロジー最適化の解析プロセスをスポット溶接位置の最適化にも適用し、車体合成を効率的に向上させることにも成功しています。

どうなったか

JFEでは、National Crash Analysis Centerで公開されているホワイトボディのフルビークルモデルを利用して、車体のねじり剛性向上を目的とした部品形状の最適化試験を行いました。その結果トポロジー最適化による残存形状を基に作製した構造物を利用することで、元の構造物に対してねじり剛性を4.3%構造させることに成功しました。
また同様のホワイトボディを構成しているスポット溶接のスポット打点に関しても最適化を行いました。その結果、トポロジー最適化手法では200打点の追加で合成向上率が約2.5倍となりました。これは、スポット打点近傍への打点追加方法と比較して、非常に効率の良い結果となります。
さらに同様の最適化手法と繊維強化樹脂を活用することで、乗用車のドア構造の最適化を行い、構造物の張り剛性を約60%向上しつつも薄肉化を達成しました。詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ

構造物の剛性を保持したまま重量や構造を最適化するトポロジー最適化手法について紹介しました。近年、トポロジー最適化手法は様々な設計場面で用いられており、複雑な構造物を生成可能な3Dプリンタの導入も相まって、応用先が拡大しています。またこちらのような深層学習技術を応用したトポロジー最適化手法も研究が始まっており、今後の発展が期待されています。

参考資料

(堀井隆斗)