小型マイコンでニューラルネットワークを動作させてモータの異常を検知:ルネサスエレクトロ二クスが組み込みAI技術を提供開始

課題

工場の電機機器や家電製品の故障をいち早く察知することは大きな事故を未然に防ぐために重要です。中でも、それらの機器に搭載されるモータは目的となる動作に直接関わるため、モータの状態を知ることは、モータ自身の故障だけでなく機器の故障についての情報得られるため重要になります。
例えば、モータの回転の負荷が異常に高まって電流値の上昇が見られる場合には、モータにつながる機械が故障していることを示唆していますし、モータを固定しているネジが緩めば振動が大きくなり機器の破断に繋がります。
インターネット経由でサーバにセンサ情報を送信して推論を行うことも考えられますが、ネットワーク環境の整備や維持費、故障時にネットワーク接続が切断された場合を考えると必要な場所で必要な計算を行い適切な対処ができることが望まれます。
しかし、センサと同時に異常検出を行うためのAIをオーバースペックなPCではなく、マイコン等の安価な計算機で動作させるのは、各種ライブラリやフレームワークへの対応ができていないためハードルが高くなっていました。

解決方法

ルネサスエレクトロニクスは、マイコンでも深層学習フレームワークで開発したニューラルネットワークを手軽に取り込んで異常検出などに使用するためのモータ制御用評価キットとRX66T用CPUカードの提供を開始しました。

RX66Tは最大4台のモータの制御ができるマイコンで、新たな機器を追加しなくてもセンサ情報を取り込んでモータの状態の推定に活用できます。これにより、保守やメンテナンスの時期の推定や接続機器の異常検知など、幅広い用途の知的情報処理に使用することができます。

説明動画によると対応するフレームワークはtensorflowやCaffeで学習済みモデルをe-AIトランスレータにより既存プログラムに取り込めるとしています。

どうなったか

デモでは、アナログ3軸加速度センサを搭載したブラシレスDCモータをADコンバータ(アナログ信号をデジタル信号へ変換)やFFT(高速フーリエ変換)回路を搭載したRXマイコンに接続して、ネジの締め付けを緩めることで擬似的にモータの設置状態を変化させて、異常な振動を検出しています。
詳細は発表されていませんが、ビデオに映っている図を見ると単純な全結合の階層型ニューラルネットワークにセンサ値の時系列データを並べるか、あるいはFFTによる周波数解析の結果を入力して、正常信号か異常信号かの2クラス判別を実行しているようです。

まとめ

マイコンでモータ状態に関する推論が可能となる製品を紹介しました。モータは家電製品としても洗濯機やエアコンの室外機など様々な機器に使用されており、故障検知や取り替え部品の交換時期の推定などへの活用が期待できます。

モータに限らず現地での推論を安価で行うためのシステムは、工場や農業をはじめとした用途に今後需要が高まると考えられます。需要の高まりに応じたニューラルネットワーク専用チップの開発など各社の開発競争が注目されます。

家電のメンテナンス性が向上するRX66Tマイコンによる「モータ搭載家電向け故障検知用e-AIソリューション」を提供開始 [ルネサスエレクトロニクス公式HP]

「e-AI」で、故障予知がスタンダードに [ルネサスエレクトロニクス公式HP]