人工知能ソフトウェアが医薬品医療機器等法の承認獲得:医師による大腸内視鏡における腫瘍判別を支援

課題

様々な医療技術の発展に伴い日本人の健康寿命は増加の傾向にあります。その一方でがんの疾患率や死亡数も増加傾向にあり、その中でも大腸がんは日本人女性のがん死数の第1位、男性の場合第3位であり早急な対応が必要とされています。大腸がんの対策や予防には、大腸内視鏡で早期がんや前がん病変である腫瘍性ポリープを発見し切除することが重要です。しかし大腸ポリープの中には悪性であり切除する必要のある腫瘍性ポリープとそうでない非腫瘍性ポリープがあり、医師はそれぞれのポリープを適切に判別する必要があります。
このような医師の内視鏡診療を支援することを目的に、サイバネットシステム株式会社は人工知能技術を用いることで大腸内視鏡診断で腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープを判別し、腫瘍性ポリープの可能性を医師に提示するソフトウェア「EndoBRAIN」(エンドブレイン)を開発し、医薬品医療機器等法に基づく認証を2018年12月6日に取得しました。このEndoBRAINは昭和大学 工藤進英特任教授の研究する内視鏡診断技術と名古屋大学 森健策教授の研究する人工知能技術との共同研究成果となります。

解決方法

EndoBRAINは機械学習アルゴリズムの一つであるサポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)で、オリンパス株式会社が開発したEndocytoと呼ばれる超拡大内視鏡によって撮影された高精細画像を解析することで腫瘍の判別をし、医師による病変の診断予測を補助します。SVMには事前に約6万枚の症例画像を、腫瘍性ポリープか非腫瘍性ポリープかの識別情報と共に教師データとして学習させます。SVMはこの学習結果をもとに実際の検査中の腫瘍画像の判別を行います。
SVMは主に2クラス分類という、あるデータXがクラスYに属するかそうでないか、の判別に利用されるアルゴリズムです。またカーネル法と呼ばれる手法を用いることで、複数の特徴量次元を持ちつ非線形なデータに対しても、高精度なクラス分類が可能となります。これは識別対象のデータを異なる次元(高次元)の空間に写像し、その空間にて識別を行う手法です。より詳細にはこちらの資料をご参照ください。

どうなったか

EndoBRAINで臨床性能試験を実施したところ、内視鏡画像に対して正診率98%、感度97%の精度で腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープの判別が可能でした。これは専門医に匹敵する能力であり、非専門医の正診率を上回る結果です。この臨床試験結果もあり、EndoBRAINは「医薬品、医療機器等の品質、有用性及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、クラスⅢ・高度管理医療機器として承認を取得しています(承認番号:23000BZX00372000)。

まとめ

医師が大腸内視鏡のポリープ画像から、腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープを診断するための支援を行うためのソフトウェアEndoBRAINについて紹介しました。このシステムは国内での臨床性能試験を経て高度管理医療機器として承認を得ています。
今後は医師と人工知能システムが協力することで医療の質を高め、医師の負担を低減するシステムの研究開発が加速すると考えられます。同様の取り組みに関してはこれまでの記事(例えばこちらこちら)でも紹介していますので是非ご覧ください。

参考資料

(堀井隆斗)