スマホアプリの行動をAIで予測しマーケティングコストを85%削減
モバイルマーケティングツールを提供するRepro株式会社と株式会社集英社が、漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」において、マーケティングコスト削減の実証実験を行いました。
課題
スマホアプリのマーケティングでは、アプリをダウンロードしてもらったユーザーにいかに長く使ってもらうかという「ユーザー継続率」が重要で、収益に大きく影響します。
そのためアプリの提供者は、アプリを立ち上げなくなるユーザーを減らすために、アプリを立ち上げると特典を与えたり、最近ログインしていない人にはメール通知、プッシュ通知、アプリ内通知で連絡などをおこなってきました。
しかしそういった取り組みが過剰になると、不必要なユーザーにも大量の通知が届くようになってゲームの体験を損ねることになりますし、通知の費用もかさむという課題がありました。
解決方法
Repro株式会社からのプレスリリースによると、集英社と共同で漫画誌アプリ「少年ジャンプ+」におけるマーケティングコスト削減の実証実験を行いました。
今回の実証実験では前述のような課題を解決するためため、AIを使ったアプリから離脱しそうなユーザーの予測と、その結果を用いて特典付きのプッシュ通知を行い離脱率が下げられるかが検証されました。
プレスリリースにはどのような特徴量を入力として予測したかは書かれていませんが、このような確率を予測する場合にはロジスティック回帰などが用いられます。ロジスティック回帰では、どの特徴量が重要であるかも学習されたモデルのパラメータから分かるため、そのような解釈が必要な場合には有用です。ただし、とにかく予測力をあげたい場合には性能が低い場合があるため、ニューラルネットワークを用いて確率を予測することも行われます。
今回のプレスリリースでは再訪確率の確率の予測がどの程度正確であったかと予測された確率に応じて施策を変更してコストを最適化した場合のコスト削減効果について検討した結果を報告しています。
どうなったか
アプリから離脱する確率の予測に関して、全体で10%程度の誤差に抑えられたということです。
(詳細が書かれていない部分があるため、推測を交えて説明すると)各ユーザに対してその特徴量から予測される再訪率に応じて30%台、40%台…とデータを分割して、それぞれの予測再訪率グループで実際の再訪確率を計算しているようです。その結果が以下の図(実際には正解となる再訪率との差)のようになり、予測した確率と実際の割合の誤差が小さかったとことを示しています。
また、施策を行なった場合と行わなかった場合の再訪率の差についても報告しており、いずれの予測再訪率の場合にも施策を行なった場合の方が上昇していました。(ただし、リリースでは30%の(予測)再訪率となる場合を1となるような正規化がされているため具体的な上昇率については伏せられています)
その結果、離脱しそうな人にだけ特典付きのプッシュ通知を配信することで離脱率を下げられ、さらに本来プッシュ通知を送るべきでない人に送らなくなった効果と合わせてコストを85%削減できるようになったと報告しています。
まとめ
確率予測モデルを活用することで、離脱を予測しマーケティングコストを削減するという事例を紹介しました。こういったアプリのユーザーの動きを一人一人観察して接客するというのは人間には不可能なことなので、まさにAIの得意な分野ですね。
今回の事例で面白いと感じたのは、単に通知先を減らすだけでなく、予算はそのままにして1つの通知に付与できる特典のコストを上げたという点です。
やめそうになると特典がもらえるというのは、なんだか不公平な感じもしますが、不要な通知が減るのは大歓迎ですし、好きなゲームやアプリケーションが収益を上げて安定的に運営するとヘビーユーザーにとっても大きな利益になりそうです。
関連URL
Repro、AIを活用した「少年ジャンプ+」との実証実験結果を発表〜AIがアプリユーザーの行動を約90%の精度で予測し、マーケティングコストの約85%削減に成功
(Marvin編集部)