より早く正確に地震波の到来を知らせる地磁気観測に基づく警報システムの実現に向けて:首都大学東京の研究グループが機械学習を用いた地磁気予測システムを提案

課題

地震の被害を抑えるためには、地震発生直後により早く警告することが重要です。現在の緊急地震速報のシステムでは強い揺れのs波よりも早く伝わるp波を用いて震度や到達時間の推定が行われています。しかしながら、警報が伝わる前にs波による揺れが発生してしまう場合もあります。そのため、地震発生直後により早く地震波の到達時間や震度を予測することは重要な課題です。

解決方法

この問題を解決するために 、首都大学東京の大久保寛准教授と香取勇太さんは、光速で伝わる地磁気を利用することを提案しています。地磁気はp波の到着よりも早く、地震の発生とほぼ同時に変化し始めます。これは、地震による地磁気の変化が、ピエゾ磁気と呼ばれる岩石に圧力が加わった時に発生する磁気により起こるためです。このピエゾ磁気は地震が発生すると岩石の圧力が開放されて減少するため、地磁気が変化します。そのため、地磁気は警報システムに有用であると考えられます。しかし、正確な地磁気の推定手法は開発されていませんでした。

そのため、今回は高速な警報システムの始めの一歩として、ある複数地点の地磁気から他の地点の地磁気を推定するシステムを提案しました。地磁気の推定にはオートエンコーダを用いたモデルを利用しました。ある地点の地磁気xyz軸のデータを入力として、他の地点の地磁気z軸のデータを出力するモデルを構築しました。学習データには、2015年1月から2015年12月までの4地点で観測した地磁気を10Hzでサンプリングした50万のデータを用いました。テストデータとしては、2016年3月のデータを用いました。観測地点は気象庁地が運営している3地点と研究グループが取得した1地点です。

学習したモデルを利用してテストデータから推定地点の地磁気の推定をおこないました。

どうなったか

複数の入力パターンにおいて地磁気の推定を行いました。その結果、推定地点以外の全地点の地磁気のxyz軸を入力として用いたものが最も高い推定精度でした。またこの結果は、単純な3層のFull Connectのモデルと比較して同等の精度でした。提案モデルはこの単純なモデルよりも結合数が少ないく計算コストが低いため、高速な推定に貢献できます。

まとめ

複数の観測地点の情報から、別のある地点の地磁気を機械学習を用いて推定する手法を提案しました。

未だ地磁気と地震の関係は不明な点が多く、地磁気の変化のみから地震波の到達予測などを行うことはできていませんが、今後、このような予測モデルの研究が進展すれば、より正確で早い地震の警報システムの実現に寄与すると期待されます。

今回紹介した内容はIEICE Communications Expressに掲載されています。

参考資料

(宮澤和貴)