目視による品質検査を人工知能システムで簡単実現:ディープラーニングによる異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection」

課題

工業製品等の製造現場では、製品の品質を保つために様々な品質検査が行われています。そのような品質検査には製品の音響的特性や重量特性、温度特性などの情報をセンサによって計測することで、製品が規格に合った正常なものであるか、または規格に合わない異常なものであるかを判定する検査装置が利用されています。一方でこれら装置で検査できる異常の範囲は狭く、工場内では人による目視での検査も行われています。
このような目視での検査に対し、機械学習、特にディープラーニングに関する技術の発展を受けて、異常検知作業を人工知能に代替させる組みが盛んです。しかし人工知能による品質検査を導入するためには、学習モデルの選定とその構築や学習などに時間とコストがかかることが問題でした。この問題に対して株式会社システムインテグレータ(以下システムインテグレータ)は、ディープラーニングを利用して異常検知を行うために必要な機能を備えた異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection」の提供を開始します。

解決方法

ディープラーニングを用いて異常検知を行う場合、まずは環境から取得できるデータ(つまり学習データ)に応じてモデルを選定する必要があります。「AISI∀ Anomaly Detection」では、正常製品のデータと異常製品のデータが確保できる場合(例えば製造過程で異常製品が多くの割合で発生する場合)などには、識別モデル型のニューラルネットワークを用いて正常・異常のデータラベル情報による教師あり学習の手法を採用することができます。一方で異常製品のデータが非常に少ない場合など、より実際の製造現場に即したような状況では、変分自己符号化器(Variational Autoencoder:VAE)と呼ばれる生成モデル型のニューラルネットワーク構造と教師なし学習の手法を利用することで、正常データのみから異常検知のための学習を行います。(ただし、画像を入力としたい場合、教師あり、教師なしのいずれの場合も畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が採用されることが多い。)

VAEでは正常データからそのデータの圧縮表現を獲得し、その圧縮表現から再度正常データを復元できるように学習します。異常検知を行う際には、学習後のVAEにデータを入力することで圧縮表現を抽出し、その圧縮表現の復元を行います。入力データが正常データである場合には復元データと入力データ間の差分が小さくなります。一方で異常データを入力し再度データを復元した際には、正常データのみを学習したVAEには異常データを復元することができずに正常データに近いデータが復元されてしまいます。そのため入力データと復元データ間の差分が大きくなり、その変化から異常データの検知と異常箇所の検出を行うことができます。VAEを用いた異常検知手法の詳細はこちらをご覧ください。
その他の「AISI∀ Anomaly Detection」の特徴としては、Microsoft社のAzureを利用している点が挙げられます。これによりディープラーニングモデルの学習はクラウド上で、学習済みモデルでの異常検知は工場に設置されたエッジコンピュータ上で実行可能することが可能です。また実際の異常検知業務では、人工知能システムが推定した異常データに対して人が再度判定結果を付与することができます。

どうなったか

生成モデルであるVAEによる復元画像を用いた異常検知の手法や、識別モデルを用いた異常検知においても手法においてもGRAD-CAMと呼ばれる手法を用いることで、異常と判断された製品のどの部分に異常点があるかの情報をヒートマップとして提示することが可能です(GRAD-CAMとCNNを利用した可視化手法の詳細に関してはこちらこちらをご参照ください)。これにより製造過程へのフィードバックをより効率的に行うことができます。また検出結果に誤りがある場合でも、人間が付与した訂正データを蓄積することで追加学習を行うことが可能です。
「AISI∀ Anomaly Detection」の販売は2018年10月24日を予定しており、導入事例等はまだ公開されていません。

まとめ

ディープラーニング技術を利用することで画像データから異常検知を行うためのシステム「AISI∀ Anomaly Detection」について紹介しました。近年、ディープラーニングを用いた異常検知は製造現場において多くの注目を集めています。またVAEやGANなどの生成モデルを利用した異常検知手法は、研究課題としても注目されています(以前の記事こちらもご覧ください)。
今後は画像データ以外を利用した異常検知手法の開発や、製造業だけでなく様々な分野への応用が重要になると考えられます。

参考資料

(堀井隆斗)