TSUTAYA AI:Twitterの投稿をもとにAIが個人にあったオススメ映画をレコメンド
課題
近年、TSUTAYAプレミアムやAmazon Prime Video、Netflixなどの定額制の動画配信サービスの利用者が急増しています。これらの会社は金額を低く設定する、コンテンツ数を増やす、オリジナルコンテンツを用意するなどしてシェア率の向上を図っています。一方でコンテンツ数が多すぎると、どの動画や映画を優先的に見るべきか頭を抱えてしまうユーザーも多いでしょう。自分の趣味嗜好に合った映画と巡り会うお手軽な方法があればと考えたことがある人も多いと思います。TSUTAYAは動画配信サービスだけでなく、レンタルとしての店舗を持っているため、日本で最も作品タイトルを持っています。これらの作品の中から一人一人に個別のレコメンドを人間が行うには限界があり、機械による自動化が可能になれば、売上向上に繋がります。
解決方法
そこでTSUTAYAは、Twitterの最新投稿100件の情報をもとに20件の映画をランキング付きでレコメンドするTSUTAYA AIを開発しました。TSUTAYAはTカードに基づく購買履歴などの情報も持っていますが、今回は、最もその人の趣味嗜好が反映されやすいと考えられるTwitterの投稿のみにデータを絞っています。
具体的な技術としては、自然言語処理がメインになります。Twitterの文章の解析は、Skip-thoughtと呼ばれる手法を参考にしているようです。この手法では、文章のような時系列データををEncoder、Decoderによる教師なし学習によって特徴量空間に圧縮します。その際にDecoderで再構成する文章は、1つ前の文章と1つ後の文章として学習するため、文脈をもとに特徴量ベクトルが獲得されていると言えます。Twitterの文章を特徴量空間のベクトルとして獲得した後、そのベクトルが映画のタイトルを含むツイートのベクトルと近い場合はその映画をレコメンドをするという仕組みになっているようです。
どうなったか
ユーザーに合ったおすすめ作品をピックアップすることで、どのタイトルを観れば良いか迷っている人がお手軽に旧作に触れる機会が増え、快適に映画を鑑賞できる環境につながると考えられます。さらに、自分に最適化されたレコメンド結果を共有し合う面白さもありそうです。
TSUTAYAは今後、今回のTSUTAYA AIによるレコメンドとTカードの購買情報に基づくレコメンドを並行して行なっていく予定であるそうです。
まとめ
TSUTAYAは日本国内で最も豊富なタイトル数を持っていますが、それ故に個人に最適化されたレコメンドを人間の手によって行うのは不可能でした。近年のビッグデータ解析は個人に最適化された情報を提供するポテンシャルを持っていますが、今回のTSUTAYA AIではTwitterという日本人の趣味嗜好を最も反映している可能性があるデータを利用している点に独自性があります。この技術は映画に限らず、あらゆるコンテンツに対して応用可能です。
今の時代は情報過多になっていて、どの情報を信頼すれば良いのかが分からなくなり、かえって不便になってきている嫌いがあります。そのため、ビックデータを人工知能が統計的に解析して人間に提供することは必要不可欠なサービスになっていくでしょう。その一環として、今回のTSUTAYA AIの事例のように個人に最適化されたレコメンドシステムの開発が重要になってくると考えられます。
参考資料
TSUTAYA AI [HP]
TSUTAYA、ツイート×AIが導き出すおすすめ映画20本–「TSUTAYA AI」を提供開始 [CNET Japan]
TSUTAYA AIの裏側[News Picks]
Skip-thoughtを用いたテキストのベクトル化 [Brain Pad]
Skip-thought Vectors [論文]
Learning to Rank for Information Retrieval [論文]
(澤 弘樹)