ロボットが機械学習で新しい化学反応を発見:機械学習で有機合成ロボットを制御して反応性を探索する研究

課題

化学反応の発見は、予測が難しく時間のかかるプロセスです。発見プロセスには偶然の要素がかかわる場合も多いため、新しい反応性や新化合物を一貫性を持って発見することが難しいという課題があります。反応性を予測することができれば、新たな反応をより効率よく発見することができますが、反応予測は単純な分子に関するものであっても複雑です。反応予測のための手法の一つとして機械学習が用いられていますが、化学への応用はまだ発展途上といえます。

 

解決方法

グラスゴー大学のリー・クローニン教授らが、ロボットと機械学習を組み合わせて化学反応の反応性を探索・評価する方法を科学誌「Nature」で発表しました。

開発されたロボットは、機械学習アルゴリズムによって制御され、化学反応実験を実行する動作をします。さらに、化学反応をリアルタイムで評価するための分光システム(核磁気共鳴法と赤外分光法)に接続されています。

機械学習はロボットの意思決定のために用いられています。具体的には、機械学習の手法の一種であるSVM(サポートベクターマシン)を用いており、試薬のスペクトルと反応の混合物のスペクトルを入力として、反応が生じるか生じないかの識別をし、1(反応が生じる)または0(反応が生じない)の出力をするものとなっています。

ここで用いられたコードおよびデータは、GitHubに公開されています。

どうなったか

この機械学習システムに対し、データセットの10%強で初期訓練を行った後、どの化学物質の組み合わせがより反応性が高いかを予測させる実験を行いました。約1000通りの組み合わせの化学反応の反応性を、86%という精度で予測できました。

さらに、ロボットが出した予測に対して、化学者が手作業で調べて確認を行ったところ、この予測が4つの新しい化学反応の発見につながったと報告されています。

このロボットを使うことによって、最も反応性が高い組み合わせを何倍もの速さで発見でき、化学者たちの作業負荷が90%はカットされるだろうとクローニン教授は述べています。

まとめ

機械学習とロボットを組み合わせることで、化学反応において新たな発見がもたらされるという事例を紹介しました。この研究でクローニン教授は、化学者のバイアスを取り除き、これまで化学者が想像できなかったようなまったく新しい化学反応や反応性を得ることを目指しました。ロボットを用いることで、そのような新しい発見が実際にできるということが、この研究結果で示されたといえるでしょう。

類似の事例として、本サイトでも以前に人工知能で金属ガラスの発見が200倍に加速するというディープラーニングを利用した物性研究の事例を紹介しています。機械学習技術や、さらに実世界で動作するロボットをうまく組み合わせ利用することで、今まで思いもよらなかったような発見が速いスピードで可能になっていくかもしれません。

参考資料

Nature ハイライト:ロボットが機械学習で新しい化学反応を発見 [Nature]
croningp/reaction_learning [GitHub]
人工知能で金属ガラスの発見が200倍に加速!Deep Learningを利用した物性研究の事例紹介 [Marvin]

(太田博己)