余震の発生確率を深層学習で予測(Nature誌掲載論文):単純なニューラルネットワークと詳細な地震データベースの連携で従来の理論を凌駕

課題

大きな地震の後の余震の確率を地域ごとに予測することは、迅速な政策決定のためにも必要な情報です。長期的な地震予測が非常に困難であるとしても、実際に起きている振動に基づいて知らせる緊急地震速報のように、その都度の観測データに基づいて余震の確率的な予測をすることは技術的に可能で、精度の向上次第ではインフラ復旧の優先順位などの意思決定にも関わってくるでしょう。

 

解決方法

2018年8月30日付のNature誌に単純な階層型ニューラルネットワークを利用して余震の有無を予測することに関する成果が掲載されました。GPS(全地球測位システム)により計測される地球表面の変化から推定される地殻における圧力(応力)変化から、それぞれの地殻中の3次元的な位置を震源とする地震が起こるか起こらないかを出力させるシステムを作るのが問題となります。

この研究では、着目する地域の地殻を5km × 5km × 5kmのメッシュに切って、それぞれの位置における応力変化の6つの独立変数(垂直応力3つと剪断応力3つ)を入力として、単位時間で1回以上の余震が発生するかどうかの確率を出力とするニューラルネットワークを構築して、学習を行ないました。階層型ニューラルネットーワークの構造は全ての隠れ層が全結合の6層構造、各層は50ニューロン、活性化関数tanhという単純なもので、全部で13451個のパラメータ(結合荷重とバイアス)となっています。学習のためのデータは世界中の地震データをまとめて整備したデータベース・国際地震センター(ISC)カタログに基づいて作成しています。

どうなったか

余震の発生をニューラルネットワークや従来の考え方で予測させたところ、地震発生の古典的考え方であるクーロン破壊基準に基づく予測モデル等と比較しても、物理的な仮定を置かないにも関わらずニューラルネットワークによる予測が非常に良い精度を達成しました。

また、ニューラルネットワークによる結果はフォン・ミューゼス応力基準による予測はよく似ており、物理的にも解釈がしやすいものでした。

まとめ

適切な物理量を入力として単純なニューラルネットワークを学習させることにより、従来の単純な物理モデルに基づく余震発生予測を上回る性能が得られました。

この成果が行政などの意思決定にとって十分なものであるかは、議論が必要です。しかし、地震予知が非常に難しいものである中で、具体的な物理量に基づく短期的な予想を機械学習に基づいて行う方向性は、余震の物理的メカニズムを考える上でも重要になってくるでしょう。

参考資料

(森裕紀)