養殖稚魚の選別をAI技術で効率化:近畿大学水産研究所、豊田通商、日本マイクロソフトが稚魚自動選別システムの共同研究開発を開始

課題

近畿大学水産研究所では、完全養殖に成功して話題となった「近大マグロ」をはじめ、多くの魚種の養殖研究を行っています。その中でもマダイは近畿大学水産研究所における養殖研究の柱の一つとなっており、マダイ稚魚の生産、販売が大きな規模で行われています。

水産研究所で育った稚魚を出荷する際には専門作業員による選別作業が必要となりますが、生育不良のものを取り除くなど基準を満たす魚だけを選別する作業が必要です。しかし、目検と手作業で行うため専門作業員の経験と集中力が高度に要求され、作業員への体力的負担も大きく、自動化が長年の課題となっていました。

解決方法

近畿大学水産研究所、豊田通商、日本マイクロソフトが共同で、画像解析と機械学習技術を組み合わせた養殖現場での「稚魚自動選別システム」を開発、実証実験を開始していることを発表しました。

稚魚の選別作業では、いけすからポンプで吸い上げた稚魚がベルトコンベアに乗せられ、作業員が選別を行っています。ここで重要となるのが、ポンプの流量調節です。水量が多いと含まれる稚魚が多くなりすぎてしまい選別作業が追いつかず、水量が少ないと稚魚が少なすぎて全体の作業効率が落ちてしまいます。

今回のシステムでは、このポンプ制御の自動化が対象となっています。豊田通商は、システムのハードウェア設計とプロトタイプ構築を担当し、マイクロソフトは自社のクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」を活用して、ポンプの流量調節をリアルタイムで自動化するソフトウェアを設計、開発しています。

ソフトウェアについて具体的には、Microsoft Azureで提供されている機械学習機能を活用して、まずベルトコンベア上の魚影面積とその隙間の面積を画像解析し、一定面積あたりの稚魚数を分析しています。さらに選別者の作業ワークロードを機械学習させ、作業のための最適値を割り出し、それに合わせてポンプの流量を自動で調節します。

どうなったか

このシステムでは、まず第一段階として、稚魚選別作業の要となるポンプ調節自動化に取り組んでいます。現在は実証実験を継続し、データの収集・分析を行うととともに、改良した制御システムを2019年3月までに本番環境に実装することを目指しているということです。

その次の段階として、生育不良の個体を取り除く作業の自動化を考えているとしています。

まとめ

養殖漁業の課題に対し、機械学習の活用によって解決を図る取り組みを紹介しました。

類似の例では、本サイトで紹介したマグロの自動カウントシステム開発があります。こちらも複数の事業者が共同で取り組み、機械学習技術を活用して、従来目視で行われていたカウントを自動化しコストを抑えようする試みです。

画像認識は、深層学習などの手法によって非常に高い精度で行うことができるようになり、それに加えて今回の例のように作業についても機械学習の対象とすることで、漁業だけでなく多種多様な場面での応用ができそうです。

参考資料

近畿大学水産研究所、養殖稚魚の選別を AI と IoT で効率化 [Microsoft News Center Japan]
AI プラットフォーム [Microsoft Azure]
養殖マグロを機械の眼で自動カウント:電通国際情報サービス、双日ツナファーム鷹島、Arayaが人工知能を用いた自動カウントシステムの共同研究開発を開始 [Marvin]

(太田博己)