ディープラーニングによる眼疾患診断システムで失明のリスクを防ぐ

課題

医師によるCTやMRI画像を利用した疾患の診断は多くの医療現場で日常的に行われています。しかし画像解析による診断は作業が煩雑になることが多く、診断までに時間を要します。特に治療が遅れると失明につながる目の疾患など、早期治療が必要な患者を素早く発見すると共に医師の負担を減らすことは重要な課題でした。
Google傘下のDeepMindはこの問題に対し、10種類の眼疾患を推定し専門医に結果を提示するシステムを開発しました。またDeepMindのシステムは眼疾患の推定に医用画像のどの部分が利用されたかを示すことが可能です。

解決方法

眼科医は患者の疾患を推定するために光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomograpy:OCT)と呼ばれる診断機器を用いて目の断面画像を撮影します。DeepMindの開発した眼疾患診断システムはこの断面画像を、領域分割ネットワーク(Segmentation Network)と分類ネットワーク(Classification Network)と呼ばれる異なる2つのネットワークが結合したディープラーニングモデルによって解析します。
領域分割ネットワークではディープラーニングの手法の1種である3D U-Net(参考はこちらも)を用いることで、OCTによって撮像された眼球の断面画像に対して、網膜や網膜内液、加齢黄斑変性など、15種類の組織領域を推定し、3次元の組織構造を生成します。このネットワークの学習には人手によって領域分割された877枚のOCT画像を教師データとして学習しています。
分類ネットワークでは領域分割ネットワークが生成した3次元組織構造を基に疾患と治療の緊急度合い、そして眼球組織量の推定を行います。治療緊急度合いに関しては緊急から経過観察までを4段階で推定し、疾患に関しては分類額に基づいた10種類の状態を推定します。ネットワークの学習には、7621人の患者から集めた14,884ものOCTスキャンを利用しています。
またこの眼疾患推定システムはアンサンブル学習という手法を利用しており、5つの領域分割ネットワークと5つの分類ネットワークによる合計25種類の組み合わせの結果を用いることで最終的な診断結果を決定します。

どうなったか

提案する眼疾患推定システムにおいて997種のテストデータの疾患推定を行いました。その結果治療緊急度合いの推定において、緊急の場合とそれ以外の場合の誤識別率を偽陽性率と真陽性率から評価するAUC(Area Under the ROC Curve)によって評価したところ、誤差率5.5%となり従来手法よりも良い性能を示しました。個別の疾患推定においても非常に高い推定精度を示しました(詳細は本文献の補足図8参照)。
またシステムの推定結果を明らかにするために、領域分割ネットワークの推定結果を可視化し、医師に視覚的に提示することができます。この手法により、ディープラーニングモデルの出力結果の要因が理解しがたかった「ブラックボックス」問題を解決し、システムの推定結果を医師に明瞭に伝えることが可能となりました。実際の可視化の様子はこちらからご覧ください。

まとめ

DeepMindは医師による医用画像を用いた診断をサポートする、眼疾患推定システムを開発しました。このシステムはディープラーニングの手法によりOCT画像から眼球の組織領域を推定し、眼疾患とその治療の緊急度合いをこれまでの手法よりも高い精度で推定可能です。また医師に推定の根拠を示すために推定した眼組織の状態を可視化することもできます。
一方でシステムの学習のためには、非常に多くの疾患画像が必要となります。今後は特殊な疾患を推定するためにも少ない画像から学習するためのシステム開発も重要になると考えられます。

参考資料

(堀井隆斗)