AIチャットボットによる顧客対応の自動化支援サービス

課題

商品に関する質問やチケットの予約など、電話やチャットによる問い合わせ窓口を利用することは珍しくありません。しかしそのようなコンタクトセンターでは人材不足を背景に顧客対応の自動化が重要な課題となっています。自動化を実現する一つの手法として自然言語処理技術を利用したチャットボットがあります。近年複数の企業がコンタクトセンターにチャットボットを導入していますが、日々変化する顧客ニーズへの対応をうまく行うことができず、充分に能力を活用できない場合や長期運用が難しいという問題がありました。
TISインテックグループの株式会社アグレックス(以下アグレックス)はコンタクトセンターが抱える課題を解決するための、AIチャットボットの導入とその継続的な運用を支援する「AIチャットボット支援サービス」の提供を開始しました。

解決方法

近年のディープラーニング技術の発展に伴い、チャットボットの性能は著しく向上しています。これらのチャットボットには時系列情報を扱うことができる再帰型ニューラルネットワークの一種であるロング・ショートタームメモリ(LSTM)が利用されています。LSTMやその構造を利用した系列変換手法(シーケンス・トゥ・シーケンス(seq2seq))では、質問文とその内容に対応する応答文を学習させることによって、新たな質問文に対する応答文を生成することが可能です。その一方で学習させるためのデータ、特にそれぞれのコンタクトセンターに応じたシナリオ文を大量に用意する必要があります。
アグレックスでは、自社のコンタクトセンター業務改善を通じたノウハウを活用するとともに、過去の問い合わせデータを分析し、チャットボットが無理なく自動対応可能な範囲を設定します。またチャットボットの継続運用のために学習データの修正や独自のツールを用いた学習データの増幅を行うようです。データ増幅に関する詳細な情報はありませんが、ディープラーニングの手法として注目されている画像の生成を行う敵対的生成モデル(Generative Adversarial Network:GAN)を文書データへ応用可能な形に改良したシーケンスGAN:SeqGANを利用する方法などが考えられます。

どうなったか

アグレックスではサービス展開に先立ち、2017年11月から2018年3月までグループ会社であるTIS株式会社のデータセンター社内問い合わせ窓口においてチャットボットの試験導入を実施しました。従来はFAQに記載されているような自己解決可能な問い合わせが多く、本来対応すべき問い合わせに時間が割けないという問題がありましたが、人とチャットボットの対応範囲を明確に分けたシステムを導入することで有人対応件数を約11%削減することに成功しました。

まとめ

株式会社アグレックスは過去の問い合わせデータからチャットボットが適切に対応可能な範囲を明確にし、チャットボットの導入を効率よく行うための支援サービスの提供を開始しました。サービスの特徴としてチャットボットの継続運用のために、学習データの修正や独自ツールによるデータの増幅があります。
ディープラーニングを利用したチャットボットシステムや自然言語処理手法はこれからの実用化に向けて注目されている技術になります。今回紹介したSeqGAN利用することで、より効率的に顧客応答のための学習データを作成することができるかもしれません。SeqGANによる文書生成についてはここをご覧ください。

参考資料

SeqGAN論文情報 [arXiv]
シーケンスGAN [八谷大岳の覚え書きブログ]
SeqGANを用いてテキスト(小説のあらすじ)の生成をする [Qiita@knok]

(堀井隆斗)