人工知能で農作業改革:農作物を判別し雑草だけに除草剤を散布するロボット「See & Spray」でコストも時間も9割削減

課題

農業において畑に生えている雑草を除去することは、農作物を育成するために重要な作業です。しかし広大な農地の雑草を人手で除草することは非常にコストがかかります。一方で除草剤を農地一帯に散布することは作業の効率化を可能にしますが農作物への影響も大きく、作業効率と農作物の生産性を両立する手法が必要でした。
この問題に対しアメリカの企業Blue River Technologyは人工知能技術を応用した除草剤散布ロボット「See & Spray」を開発しました。「See & Spray」はすでに綿やレタス畑で稼働しています。

解決方法

雑草のみに除草剤を散布するためには、農作物と雑草を識別する必要があります。「See & Spray」ではディープラーニング(例えば、畳み込みニューラルネットワーク)を用いて除草対象とそうでない植物を識別する技術を開発しました。ディープラーニングモデルを学習するために約1000万枚の農作物や雑草の画像を利用したようです。これにより学習が終わったディープラーニングモデルは農家の方が農作物に挟まれて見つけることのできなかった雑草も検知することにも成功しました。また検知した雑草に正確に除草剤を散布するために非常に高速にまた正確に動作する噴射ノズルをロボットに利用しています。

どうなったか

非常に大量のデータを用いて学習したディープラーニングモデルによって、「See & Spray」は綿とレタスのみならず、胡椒、大豆、トウモロコシ、ヒヨコマメと雑草を識別し、雑草のみに農薬を散布することが可能になりました。また「See & Spray」は1分間に約5000回の速度で雑草検出し、1/4インチ(約6㎜)の精度で除草剤の散布が可能です。実際に「See & Spray」を利用して除草剤の散布を行うことで、除草剤の散布時間とその費用を最大で従来の90%にまで削減することができます。また効率よく除草を行えることから農作物を遺伝子組み換え作物から一般的な種子に切り替えることが可能になり、約50%もの費用を削減することができました。
実際のに「See & Spray」が除草剤を散布する様子はこちらでご覧になれます。また「See & Spray」のプロモーション動画はこちらでご覧になれます。

まとめ

ディープラーニングを利用して農作物と雑草を区別し、効率的に農薬を散布することが可能なロボット「See & Spray」を紹介しました。ディープラーニングによる物体認識は非常に多くの知見がありその認識精度も高いことから様々な分野に応用が可能ですが、非常に多くのデータを必要とするという課題もあります。「See & Spray」は自身が除草剤を散布した後の画像を別のカメラで取得し、除草剤散布の精度向上やディープラーニングモデル学習のためのデータを集めることができます。このように大量のデータを集める工夫を行うことでより簡単にディープラーニングの技術を利用することが可能となります。
日本の農地はアメリカの農地のように広大ではなく、また水田では散布した除草剤が農作物にも影響を与えるという問題もあります。環境に合わせた視点と技術を組み合わせることで新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。

参考資料

(堀井隆斗)