人工知能で約6,000倍の診断速度:エックス線画像からの歯科診断支援を可能にする人工知能システムの開発

課題

歯科パノラマエックス線画像は、ほとんどの初診時の歯科治療患者に対して撮影される医療画像であり、患者の口腔内全体を把握することができます。しかし歯科パノラマエックス線画像の読影(医療画像からの診断を行うこと)は医師の経験により差が出ることから、読影システムによる医療の標準化及びダブルチェックが望まれていました。
この問題に対し、医療法人社団葵会(以下葵会)とメディホーム株式会社(以下メディホーム)は歯科医師のサポートを行うことが可能な歯科パノラマエックス線画像における診断AIを開発しました。

解決方法

詳細な人工知能技術は公開されていませんが、診断AIは歯科パノラマエックス線画像を読み込み、近年研究が盛んにおこなわれている画像処理分野におけるディープラーニングの手法(例えば、畳み込みニューラルネットワーク)を用いて患者の病状を診断していると考えられます。今回の葵会とメディホームの共同研究では、葵会と歯科医師のスタディグループ提供による画像データをAOI国際病院歯科口腔外科の田島聖士医師を中心として歯科パノラマエックス線画像の読影を行い、診断AI開発のための教師データとしました。使用されたデータ数は歯科パノラマエックス線画像が約12,000枚、病状患部が約25,000件となります。

どうなったか

今回開発された診断AIでは、歯科パノラマエックス線画像から「う蝕(虫歯)」と「根尖病巣」の患部を検出することが可能です。今後「歯石」や「嚢胞」、「根分岐部病変」の各症状に対しても対応が可能になるようです(2018年5月での情報)。病状によっては医師が見逃した患部をこの診断AIが特定するなど、人間を上回る精度を発揮し、また歯科パノラマエックス線画像の読影時間は1枚あたり0.018秒程度と、ベテラン歯科医師の平均的な読影時間120秒の約6,000倍で診断が可能になりました。

まとめ

近年、機械学習などの人工知能分野が急速に成長し、医療画像を用いた診断補助人工知能システムの開発も盛んにおこなわれています。今回の葵会とメディホームの共同研究のように、これまで扱いが難しかった医療データを病院と医療関連企業が連携することで人工知能技術を利用した新たな取り組みが可能になりました。
今回開発された診断AIは機械学習手法を利用しているため、歯科医師との協力の下で学習を重ねることで診断制度が向上していく仕組みになっており、今後はさらなる診断制度の向上と歯科エックス線システムやカルテシステムとの連携強化を予定しているようです。

参考資料

(堀井隆斗)