人工知能で金属ガラスの発見が200倍に加速!Deep Learningを利用した物性研究の事例紹介

課題

SLAC国立加速器研究所ノースウェスタン大学等の合同研究チームは、金属ガラスの生成に機械学習を利用することで有効な物性を持つ金属ガラスの発見を高速化することに成功し、Accelerated discovery of metallic glasses through iteration of machine learning and high-throughput experimentsというタイトルでScience Advancesに論文を投稿しました。

金属ガラスは金属元素を主成分とする非結晶性の合金で、ガラス転移が明確に観測されます。このような物性は高い耐腐食性や耐摩耗性、剛性、軽さにつながるため、次世代を担う材料として大きく期待されています。しかし、現在までに発見された実用化が期待されるレベルの金属ガラスは数種類しかありません。これは、金属の組み合わせが数百万種類ある中から、金属ガラスの物性を生み出す組み合わせを予測することは容易ではなく、1つ1つの実験にも多大なコストがかかるためです。機械学習による物性値の予測を利用することで、不要な実験を減らし、高速で研究できるようになると考えられます。

解決方法

本研究での実験プロセスは次のようです。まず、過去50年間で収集されたおよそ6000件もの実験データを入力として機械学習を行ないます。この学習器から得られた予測結果に基づいてサンプル合金を実際に生成し、この合金の物性値をデータベースに加え、追加学習を行う。学習結果に基づき、新たなサンプルを生成する。以上の繰り返しになります。

ここでのポイントは、過去50年間に集まった生データをもとに、人間では到底判断できないデータ間の相関を自己組織的に獲得している点であると考えられます。これによって得られる物性値に当たりをつけることができ、無駄な実験の試行回数を減らすことが可能となりました。このような生データから相関を獲得する仕事はDeep Learningが得意とする分野になります。この研究ではさらに、実験によって新たに得られたデータで追加学習していくことで金属ガラスの発見率の上昇が確認されています。

どうなったか

機械学習による予測とサンプル生成実験を繰り返していくことで、300~400パターンの資料から金属ガラスが1つ発見されるといった割合が、2,3パターンの資料から1つ発見できるレベルにまで当たりをつけることが可能になりました。本論文では機械学習を取り入れたことで金属ガラスを発見するのに必要な速度が従来の方法に比べて約200倍に高められたと報告されています。

まとめ

機械学習の利用によって、金属ガラスの発見速度が200倍に上昇しました。本論文の著者の一人は実験がうまくいった理由として、実際の測定により得られた結果を機械学習の入力として学習し、機械学習によって予測されたデータを実験に反映するといったサイクルを高速で回した点にあると述べています。今回のような、人間には到底理解不能である多変量間の相関を自己組織的に獲得することは、大量のデータが存在する場合、Deep Learningがもっとも得意とする範囲です。事実、物性研究に限らず、多変量解析を内包する研究分野では次々とDeep Learningの利用によるブレイクスルーが起きています。

今回のように、多変量の入力と出力が対として存在するデータセットが大量に用意できる場合はDeep Learningを利用することで大きな成果を挙げることができると考えられます。逆を言えば、そのような機械学習に優しいデータセットを用意することが重要な課題であると言えるかもしれません。

参考資料

Deep Learning Tutorial [ICMLスライド]

(H.S)